「音楽とは、心を癒す物語なのであ〜る。分かるかね、佐々木君」
 わかりません。僕、佐々木祐介は心の中で答えておいた。
 口に出したら最後、目の前の変人は怒りまくるに決まっているのだ。

 僕はオーケストラのホルン吹きだ。高校で吹奏楽を経験し、大学入学と同時にオーケストラに転職した。転職……? ちょっと違うかな。まぁともかく、吹奏楽ではなく管弦楽でホルンを吹いてみたいと思ったのがきっかけだ。
 吹奏楽でホルンというのは少々隠れ気味である。
「楽器やってるんだ、なんて楽器?」「えーと、金管楽器のホルン」「トランペットより大きいやつ?」
 会話にすればこんなものだ。
 加えて曲中ではトランペットには敵わないうえに、見せ場もサックスに持ってかれてしまうのである。
 まぁ、僕がオーケストラを選んだのはそれだけが理由ではないのだけど。

 音楽変人である赤沼が目の前で何かを喋っていたが僕はそれをやんわりと無視した。
 こいつは変わり者で、学科でも非常に浮いている。でも、僕は知っている。バイオリンを持ったこいつの印象は百八十度変化するのを。

オーケストラの祭日

ホルン吹き佐々木祐介と彼の所属するアマチュア大学オーケストラを主題にした一話完結式ノベルです。基本は彼の演奏した曲というテーマで、一曲一話な感じの小話チックに。
時系列もばらばらの予定です。連載が増えて来たら時間軸なんかをあわせてお伝えしますが、基本は個々に独立した物語を楽しんでください。

本編

・第一話:チャイコフスキー 交響曲第五番ホ短調作品64 (2008-09-11)
・第二話:ベートーヴェン 交響曲第五番ハ短調作品67「運命」 (2008-09-22)
・第三話:ロッシーニ 歌劇「ウィリアム・テル」序曲 (2008-10-15)
・第四話:閑話休題・チューニング (2008-11-21)
・第五話:ムソルグスキー 展覧会の絵 (2012-10-30〜)
      - 第1プロムナード (1) (2) (3)
      - 小人ーグノーム (1)
      - 第2プロムナード (1) (2)
      - 古城 (1) (2)
      - 第3プロムナード (1)
      - チュイルリーの庭 (1)
      - ビドロ (1)
      - 第4プロムナード (1)
      - 卵の殻をつけた雛鳥の踊り (1)
      - サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ (1)
      - リモージュの市場 (1) 

話数はWebにて公開した順でついているだけで、時系列とは一致しません。
ご意見・ご感想お待ちしています。
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dNoVeLs様へも掲載しております。

発行本

本作品は同人誌として発行されています。
文庫はフルカラーカバー・栞付き仕様。番外編はポケットスコア風です。
すべて登場人物などは共通ですが、読みきりです。お好きなものからどうぞ。

「オーケストラの祭日」(第1巻)

2009年11月15日発行(2010年2月15日2版、2012年9月29日3版発行)
A6(文庫)・P184・800円
佐々木祐介の大学オケ3年間をつづった第一作。

<収録曲>
・ブラームス 悲劇的序曲 / ・シベリウス 交響曲第1番
・チャイコフスキー 交響曲第5番 / ・ベートーベン 交響曲第5番
・ロッシーニ ウィリアムテル序曲 / ・フランク 交響曲
・ドヴォルザーク 交響曲第8番 / ・ラヴェル 古風なメヌエット
・ブラームス 交響曲第2番 / ・ブラームス 大学祝典序曲

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「オーケストラの祭日~AnotherSide~」

 2011年8月14日発行
 B6・表紙墨刷りコピー・P.20・100円
「オーケストラの祭日」では語られなかったメンバーの、別観点でお届けする特別版。

「アルペッジョの祝典」(第2巻)

2011年11月3日発行(2012年9月29日2版発行)
A6(文庫)・P182・700円
佐々木青年の卒業演奏会をメインに、大学生活を曲と共に振り返ります。

<収録曲>
・バッハ ブランデンブルグ協奏曲 / ・サン=サーンス 死の舞踏
・エルガー 威風堂々 / ・ドリーヴ バレエ組曲コッペリア
・ウェーバー 魔弾の射手 / ・ラフマニノフ 交響曲第2番
・ブラームス 交響曲第4番 / ・チャイコフスキー バレエ組曲胡桃割り人形
・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 / ・ベートーヴェン 交響曲第7番

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「ラルガメンテの福音」(第3巻)

2013年11月4日発行
A6(文庫)・P182・700円
佐々木祐介が学生オケを引退、しいては大学卒業から早数年が経過した。
そんな彼も年に一回、同期と忘年会で飲む機会がある。
社会人となり、置かれた状況も変化していく中、変わらず音楽を続けている友人は少なくなっていった。

<収録曲>
・チャイコフスキー 白鳥の湖 / ・フォーレ ドリー
・ワーグナー リエンツィ序曲 / ・プレムル ディベルティメント
・ブラームス ホルン三重奏 / ・ムソルグスキー(ラヴェル編) 展覧会の絵
・ベートーヴェン エグモント序曲 / ・ショスタコーヴィチ 交響曲第五番

<収録曲>
・佐々木祐介と某大学オケ楽団史


簡易用語解説

知らなくても物語は読めます。「これって何の事だろう?」が詳しく知りたい方向け。

学生指揮者

学生オケは外部から指揮者の先生をお呼びしますが、毎回そういうわけにもいかないので、大半の学校では学生を代表した指揮者の人が通常練習を指導しています。

弦楽器

バイオリンとかの弦による楽器。高い方から順にバイオリン(オーケストラでは1stと2ndの二つに分かれる)、ビオラ,チェロ、コントラバス。

木管楽器

クラリネットとか有名。フルートも木管楽器。サックスはオーケストラでは使われないです。オーボエは魔女の宅急便のテーマが有名。ファゴットは縁の下の支え。

金管楽器

別名うるさい人達。有名なのはトランペット、それからトロンボーン。ホルンも金管楽器です。一番音が低いのはチューバ。

打楽器

パーカッションとも呼ばれる。私の知っている指揮者の先生曰く、「オーケストラで一番存在感があるのは指揮者、次はティンパニだ」とのこと。あと、トライアングルとシンバルは本当に技術が要る。

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