12. Winter, disillusionment - 1

 冬が訪れるころには講議も週に一回のペースで行われており、時には二度行われることもあった。
「今日は何話すの?」
「言ったら面白くないだろ」
 女研究員が出席するようになってからと言うもの、講議内容のまとめは研究室でやらなくなっていた。うちでやっているのか、はたまた一号館に戻っているのか。
 彼なりの優しさもあったのだろう。女研究員が講議を楽しみにできるように、と。
 だが、すっかり一人になれてしまった女研究員にとっては、一人の白科はとても憂鬱なものとなり、せっかく見い出していた『目標』もいつしか消えかけていた。
 それでも、講議は出席していたし、学者も、白科に顔を出さないわけでは無かった。
「……今日も来ないなー」
 だらだらと、いつもの姿勢でシャーペンを握る。視力の悪くなる姿勢。
 彼女の机では無い。あまりに汚くなってしまった使い物にならなくなったため、学者の机を借りている。
 書いているのは、いつもの小説だった。 小説のワンシーンで、主人公が目標を失ってしまったと、そのようなことがえががれている。自分でも、分かっているらしい。 だいぶ進んできたそれを、彼女は定期的にパソコンに打ち込んでおり、日々画面に向っていた。
「ばーか」
 つぶやきは、誰にも聞かれることは無い。