08. Pressed-leaf bookmark

 台風の去った天気のように、膨大な行数にわたるプログラムが処理を終えたときのように、いつの間にかりカードの気持ちも晴れやかになっていた。授業を少ししかこなさなかったので部屋の中で清掃担当の人と鉢合わせしてしまい、急がしてしまったのを心苦しく思う程度だ。
 綺麗に整ったベッドをもみくちゃにするべく横になる。枕元においてあるのはお気に入りの 書物で、彼女の母親の故郷である四季国にある女神像をモチーフとした物語だった。
『夢見る少女はね、みんな一度はこういうものに憧れるのよ』
 年甲斐も無く手のひらを重ねてきゃーんとか言う、ケイズ・ヒューストン。年齢はヒミツらしい。はっはっはケイズはいつまでも私の愛しい少女だよいやーんあなた大好きーとかやってる両親の姿を想像してちょっと憂鬱になった。
 書物途中に挟まれたカードを抜き去る。ミスター・ミウラの発明品の一つであるカードメイカーによって作られた半透明のそのカードには、乾燥した桃色の花が挟まっていた。母親の国で比較的慣習のあるもので、枯れる前に保存したいというリカードのためにその花を加工してくれたのだ。
『でも、そんな花オルガリー家の庭にたっくさん咲いているのに』
 母がそんな風に言ったきがする。最近は柄にもなく昔のことを思い出すようになった。夢のせいなのか、ケヒナーが変なことを言うからか。術の修行をしているうちに将来に思うところがあったのか。要因はなんでもいいけど、もやもやは離れて消えない。けれども精神的にハードだった体は不調と疲れを訴えており、同時に眠気も襲ってくる。
 結局物語に集中できないまま、リカードは眠気に身を委ねた。