「なんかご都合主義って感じもするけどさ」
アイリがぼーっと空を見上げる。白いチェアに腰掛けており、口からポテトの切れ端が覗いていた。
「いいんじゃない?まぁアキラ王の性格はどうよって感じもするけど、悪いことじゃなさそうだし」
アイリが文句を言えばカイが反論する。それはもはやお決まりのパターンだった。
「でも、王は名前を知らないわけじゃなかったんですね。なんだかだまされたなぁ」
「王族の事情というものがあるのでしょうね」
先程まで感情的になっていたミスター・ミウラの最高傑作主人命人形(マスタードール)である君楊がぼやく。ニコニコとしているのはもちろん撫子だ。
「まぁ、結果オーライか」
アイリは隅の方で地面に座り、紙の束を丹念に数えている男を眺めた。
現在自分たちが食べている、もとい休んでいるこのカフェの料金は彼持ちだ。当初の予定通り、報酬金をたっぷりと貰ったリョウは、今までに無いくらい上機嫌だ。
人のことは言えないが、呆れたようにアイリが頬杖をつく。
「これからどうします?」
尋ねたのはカイだ。答えるのは撫子である。
「失国に行くには属性の力を借りないといけません。出来れば、色んな地で有力な属性を持つ人を探したいのですが……」
「また人探しかー。まあアタシの性分には合ってるかな。よし、一休みしたら行こうぜ。いいだろ、カナ?」
丸いテーブルを囲んで彼らは座っていたのだが、カナだけは食事にも手をつけていなかった。あれだけアイリのレストランで食事を楽しんでいた様子からすれば、全くもって不自然であろう。
彼女はむすーっとした顔で、一言呟いた。
「何がなんだか、全然わっかんない」
気絶していたお前が悪い。
お金を数える手を止めたリョウにまで、カナは言われてしまったのだった。