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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [19]

第4章 絆はすぐそこに [19]

「うわぁぁあああああああ」
 ヨシナオが頭を抱えて叫んだ。アキラがそれに向かって走り寄る。周辺にいた兵士も、彼の持つ武器が無くなったためか、アキラに近づいて彼を守ろうとした。
 だが、アキラは首を振ることで彼らを制した。少しずつ、近づいていく。
「貴方がこんなことをして、彼が喜ぶと思う?」
 いつの間にか呪文を唱え終わっていた撫子が杖をとん、とついた。『彼?』とだれもが頭に思い浮かべる。
 撫子の持っていた杖の上部が輝き始め、そこに空間が生まれた。
 そこから、透明な人物が現れる。錯乱していたヨシナオがそこに目を奪われ、叫んだ。
「……コツ師匠?」
『ヨシナオ』
 輝きがひいていく。だんだんとその輪郭がはっきりし、銀髪の老人が現れた。 ヨシナオと同じデザインの服を着ているが、彼の色は深い碧色だった。彼はアキラを見ると申し訳なさそうに目を伏せた。
『ヨシナオ』
「せんせい……せんせぇ……」
 ヨシナオが涙で声を上擦らせる。いつのまにか呼び名は師匠ではなく、先生になっていた。今より幼い頃はそう呼んでいたのかもしれなかった。ゆっくりと、コツが近づいてくる。
『ヨシナオ、すまない。本当はアキラ王の息子だと私は知っていたのだよ。母親が居なくなり、そのショックのあまり王は子育てをする気を無くしてしまった。そうして私に預けたのだよ』
「そんなっ……」
『本当は、ヨシナオが成長したら迎えに来てもらうう予定だった。だが、私のわがままでもう少し一緒にいたいと思ってしまった。ヨシナオ、お前の名はアキラ王がつけたのだよ』
 がくん、と撫子の肩が落ちた。よく見ると額に汗をかいている。カイがそれを支えた。熱い息がかかる。体も非常に熱を持っていた。
『そろそろ限界のようだ。無理をいって申し訳なかった。ヨシナオ、ミクロ光線は人を殺めるためじゃない』
「先生!」
 ヨシナオが手を伸ばすが、それはコツの体をすり抜けるだけだった。それを引き金に、嗚咽が漏れる。
『お前が国を治めるのに、役に立ててくれ』
 そこまで言って、コツの姿が消えた。同時に撫子の体がぐらりとよろめく。

 

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