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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [18]

第4章 絆はすぐそこに [18]

「確かに貴方は親と離れていたでしょう。でも、今まで貴方はコツさんという素晴らしい人と一緒だったじゃないですか。しかも本当の親だって分かって、そりゃ辛いかもしれませんが、帰る場所があるんですよ」
 君楊はそこで言葉を切ると、ヨシナオよりも奥にいる、アキラを見た。アキラは絶望の入り交じった顔で、何も言葉にしてはいない。
「……アキラ王のしたことは許されません。リョウさんが怒ったように、僕も、許せないと思います。でも、でも、それが無かったら貴方はコツさんの優しさに触れることは無かった。それに、ミスター・ミウラの元にいたコツさんが……人を殺傷する為に発明品を作るなんてことしません」
 そこまで叫んで、彼は胸に手を当てた。どれだけ大きな声で喋っても疲れることの無い体が、このときばかりは嬉しいと思った。
「ミスター・ミウラはこの世の中のために、いろんな技術を作りました。 それがどんな思いを持って作ったのかは分かりません。でも、復讐の道具なんかされたら、道具だって悲しみます。発明品にだって、使われたいこととそうでないことがあります……」
 彼の瞳から、水分が溢れた。崇高なプログラムだった。
「僕だから、わかります」
 ミスター・ミウラの傑作である自分。ヨシナオには彼が何を意図しているかは分からなかったが、そのまま呆然と目を奪われてしまう。ミクロ光線も今は手の届かないところにあり、行動も出来ないでいた。
「帰るっ……場所っ……がっ……」
「君楊、もういい」
 ふるふると肩を震わせる小さな少年に、アイリがそっと手を置いた。水分は既に流れていない。限りが会ったのだろう。触れた肩は若干ではあるが湿っていた。 アイリは弾かれたミクロ光線を拾い、そのフォルムを観察した。ふむ、と一言漏らす。
「ヨシナオさんよ」
 びっくりする程優しい声に、呼ばれた本人が顔を上げる。
「アタシもあんたが悪いなんて思わないよ。でも、こいつの言うことも最もだと思わない?怒るよりも、別のことができるんじゃない?いつか、人は死ぬんだから」
 アイリはそう言って、床に寝転がるカナの方へ歩いて行った。いつの間にか撫子も結界を解いていたが、彼女はまた何かをもごもごと呟いているようだった。 アイリがミクロ光線のつまみを捻る。そのまま銃口をカナに向けて、ぴしゅんと打った。
「ぷは」
 カナの体がぴくんと動く。
「心の底では、本当の父親に会いたかったんじゃないのか?」
 小さな声だったが、静寂に支配された今の空間では響きすぎる程深く声が伝わっていた。

 

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