「ちぃっ」
機械技術に精通しているのか、それがどういうものか理解しているのだろう。ヨシナオが悔しそうに舌打ちする。
「貴方を傷つけるつもりはありません。ただ、カナとそこに倒れている人達を元に戻しなさい。でなければ、力づくででもそのミクロ光線を奪います」
撫子が強く言う。結界が張られたことに安心したのだろう、リョウがカナを床に下ろした。
カイは兵士達を守る為か、絨毯に紙切れを置いている。これが彼女の言う『符』というやつだろう。複雑な文字が書かれたその用紙を、幾重にも貼付けていた。
「はは……はははははは」
だが、ヨシナオは笑い出した。右手でミクロ光線を持ったまま、左手で癖のある髪の毛をかきむしる。
「大和家の王女様も、結局僕らの気持ちなんて分からないんだろう。僕が何をしたというんだ」
けらけらと笑い、今度は両手を左右に広げた。もちろんミクロ光線は持ったままだ。
「コツ師匠は銀髪だったし、結婚もしていなさそうだったから、僕の父親じゃないことなんて知っていたさ。でも師匠はそれについては何も言わなかった。そうしたら気付くに決まっている、僕が孤児だってこと。気付くに決まっているだろう?」
ヨシナオが振り向く。視線の先には立ちすくむアキラがいた。にやりと笑って、それでも涙を流して彼は続けた。
「師匠はそうして寿命で亡くなった。師匠がずっと作っていたミクロ光線。ベッドで、師匠は言ったんだ。これを、これを使って……って。わかるかい?これは復讐だよ。僕を見捨てた親への復讐。この僕の気持ちが分かるかい?こんなやつ、死んでしまえばいい。師匠だってそれを望んでい……」
ヨシナオの言葉は最後まで聞くことが出来なかった。
何故なら、発言していた彼は後ろからの衝撃により絨毯に叩き付けられたからだ。同時に、右手からミクロ光線が落ちた。
呆然としたまま、叩かれた左頬をさする。叩くというより拳で殴られたのかもしれない。見上げればそこに、君楊が立っていた。
「さっきから聞いていればなんですか!」
自ら結界を抜けだし、君楊はヨシナオに近づいていたのである。
開いていた手のひらを握りしめた。