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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [16]

第4章 絆はすぐそこに [16]

「おお、ヨシナオ……」
 アキラがそこで初めて彼の名を呼んだ。そのまま椅子から体を離し、立ち上がる。 だが、ヨシナオ自身はアキラの発言に表情を歪ませると、そのままミクロ光線を掲げた。
「させません!」
 見えないその何かは、音をたててはじかれた。本当に薄い、桃色の膜がアキラの前に張られている。先程は間に合わなかったため、その反省を活かしたのだろう。撫子は既に術を唱えていたのだ。
「馬鹿な!師匠のミクロ光線が、通過しない?」
 狼狽し始めるヨシナオに、カイがふふん、と笑みを浮かべる。
「いくらその光線がすごいって言っても、撫子様の魔術力に勝てると思って?」
「撫子様……?そうか、大和家の」
 ヨシナオは一旦アキラから視線を外し、カナ達の方へと向き直った。いくら大和撫子と言っても、同時に結界は張れないと踏んだのだろう。
「なら、お前達からミクロ光線の餌食にしてやる!」
 数発打つモーションを見せる。だが、またしてもそれは音を立てて敗れ去った。
「なんでだ?同時に、しかも威力の高い結界は張れないはず!」
「ええ。そのミクロ光線は化学の力で出来ているといっても、相当の魔術力を秘めているに違いないのね。さすが発明品だけあるわ」
 撫子がミクロ光線の魔術力を褒めた。彼女にそこまで言わせるとは、やはり科学技術の力もかなり高度なのであろう。
「では何故……っ」
「こちらの結界は僕が張っているのですよ」
 微笑むのは青い髪の少年だ。両手を掲げて、エメラルドグリーンの膜を張っていた。ヨシナオがそれを見て舌打ちする。
「ただの、術者風情がっ?」
「ただの術者とかいっていいのかーい?こいつは、ミスター・ミウラの至高の発明品、主人命人形(マスタードール)だぜ?」
 アイリが君楊のことを自ら言うのは珍しかった。それだけ、現状に怒っているのかも知れない。 ミクロ光線とやらが発明品であっても、その創始者たるミスター・ミウラの機械技術では互角になるのは当然だろう。

 

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