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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [15]

第4章 絆はすぐそこに [15]

「王様っ!」
 兵士の声が重なる。赤い絨毯の間に、突如としてまばゆい光が現れた。光が止むとそこには青い服の少年が立っており、現在光は彼を取り囲んでいた。
 その円に沿う形で、多くの兵が彼を包囲する。 だが彼らはその少年に近づくことも、攻撃することも出来なかった。
 何故なら、自分たちの前に倒れている二人の同僚がいたからだ。 彼らは見えない何かに打たれ、倒れ込んでしまったのである。カナと同じ、ミクロ光線による犠牲者なのだろう。ヨシナオが説明するとも思えないため、兵にとってその正体がわからない。故に余計タチが悪い。
 ギャグ模様付きの絨毯の上には、模様の無いこれまた赤色の絨毯がまっすぐに伸びていた。少年はそこに立っている。否、一歩ずつ前に向かって歩いていた。
 先の方にある多少の段差を越えると、そこには王の椅子があった。そこにはもちろんそこに座るべき人物がいる。アキラだ。
「お主は……まさか……」
「僕の許可無しに口を開くんじゃない!」
 ぴしゅん、と床に向かってミクロ光線が発射された。絨毯からは煙ひとつ立っていなかったが、繊維が微妙に解れているのが近くにいた兵士にだけ理解できた。ヨシナオの背後にゆっくり近づいていたのだが、それをみて思わず後ずさりしてしまう。 彼らの守るべきアキラに一歩ずつ近づいて行く侵入者を止めることも出来ない。
 ふと、先程と同じように光が溢れた。 兵達は今度はそちらの光に武器を構えた。侵入者の少年、つまりヨシナオも顔だけを自分の背後に向ける。
「カナ嬢!ハーヴェル殿、アイリ殿、君楊殿。……それに撫子様?」
 先程と同じように光の中から現れた人物を見て王が感嘆の叫びをもらす。撫子が彼らと一緒にいることも疑問だったが、すぐに計画のことを思い出し、何か問題があったのだとも思った。 逆に撫子はアキラには目を向けず、何事かを呟き始める。 アキラも、今はそれどころではなかった。
「口を開くなと言っただろう!」
「ヨシナオ君!」
 再び繊維が滅する。カイが呼ぶのとそれはほぼ同時だった。

 

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