「カナ!」
結界が消えるのとカイがカナに寄るのはほぼ同時だった。続いて撫子とアイリも近づいてくる。
「ごめんなさい、私がもっと早く気付けば……」
「あんたのせいじゃない。迂闊に飛び出すカナが悪いんだ。しかし、これは……君楊!」
「はい。どうやら体の一部の機能が低下しているようです。今はまだ大丈夫ですが、このままでは……」
「治せないの?」
君楊は申し訳なさそうに頷いた。それはそうだろう、おそらくミクロ光線とやらでしか治せないのだ。カイもそれを知っていたけれど、もしかしたらという気持ちが、質問を止められなかった。
カナの体が持ち上がる。よく見れば、リョウが彼女を担いでいた。そのまま自分の背中に負ぶさる。
「撫子、もう一度ワープの術を唱えてくれるか?」
機嫌が良い声ではなかった。でも怒りとは違う、すこし悲しそうな声だった。
その声と行動にカイの胸がちくりと痛む。けれど今はそれどころではない。恋愛より親友との友情が大事だ。
「撫子様!」
カイも振り向いた。撫子は既に術の詠唱に入っていた。アイリが慌ててカナの落とした杖を拾う。剣はカナの腰についたままだった。
本日二度目の移動だ。移動する方も集中していた。