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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [13]

第4章 絆はすぐそこに [13]

「カナ!」
 カイが飛び出そうとする。しかし今度は間に合ったと言わんばかりにアイリが彼女のローブを左手で掴んだ。
「迂闊に出るな!」
 カイは悔しそうに唇を噛んだ。カナは倒れたまま、わなわなと体を震わせている。 彼女の前には、楕円形の立体に直方体の取っ手を付けたような、所謂銃の形をした物体を両手で抱えるヨシナオが立っていた。
 直方体の取っ手はちょうど手のひらくらいの長さをしている。本体である立体の方は人の顔程のサイズで、色は銀色をしていた。
「へえ、僕の親は笑国の王なんだ。これには驚いた。殺すにはなかなか面白い存在だな」
「カナに何をした」
 アイリがマントの中から小瓶を数個取り出した。カナとの闘いに利用したものだろう。近くに寄れないなら遠距離と踏んだのかもしれない。 震えていたはずのカナの身体はいつの間にか止まっていた。
「この」
 重そうなその銃を片手でくるりと一回転させる。
「コツ師匠の発明品である、ミクロ光線で打ったのさ。目に見えない化学的なダメージを与えることができる。師匠は工学より化学に長けていたからね。使い方次第では、彼女のように」
 そこでヨシナオが足下に倒れるカナを見た。
「体の機能を低下させることもできるし、上げることもできるよ」
「卑怯な……っ!」
「動くんじゃない。後ろの女もだ。下手な行動はやめてもらおうか」
 再び走り出そうとしたカイを言葉ひとつで制した。また、その後ろにいたアイリがコルクの蓋に指を掛けていたがそれも見破られていたらしい。彼は銃口をそちらに向けて脅してくる。
「君たちには感謝しているよ。僕が一番憎くてたまらないのが誰かを教えてくれたのだから」
 そう言うと、彼は銃を頭上に持ち上げた。 何事かと思い、君楊と撫子が結界に力を注ぐ。
 だが、ヨシナオの姿が光線に包まれたかと思うと、そのまま彼は姿を消した。

 

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