EACH COURAGE

Story - 4th:One must go abroad to hear of home [12]

第4章 絆はすぐそこに [12]

 ブーツが茶色の板を叩く。先程の食堂よりも一回りくらい小さい。左側に出窓と、右側にドア。 それだけでそこがなんらかの家だということが分かる。 部屋の真ん中には丸いテーブルがあって、そこにはぐしゃぐしゃになった木屑などが散乱していた。 木屑や工具などはテーブルの上では飽き足らず、床にまでも走り出しているようだった。それでも掃除はされているようで、蜘蛛の巣などは見られなかった。
「誰だ!」
 足音に反応したのだろう。ドアが開いて、人が飛び込んでくる。薄汚れた金髪と細身の体。
「ヨシナオ君!」
 名前を呼ばれたことに驚いたのか、彼の体が一瞬止まる。 だがそれは本当に一瞬で、そのままカナ達の方に近寄って来た。
「なんだ、不法侵入か。行儀の悪い人達だな」
 不法侵入という言葉が皮肉にもアキラを思い出させた。状況としては相応しい台詞ではあるのだが、運命のいたずらを感じてしまう。 昨日のカナたちのことは覚えていないらしい。彼は意識を失っていたので当然かもしれない。
 その昨日の姿とはやや異なっていた。服装も髪型も変わらないのだが、意識があるだけで、彼がしっかりした人物だというのは分かる。 聞こえた声も意外にもはっきりしていた。細身ではあったがしっかりと直立しており、やや日焼けした肌にそばかすが浮いている。くすんだ金髪だけは癖がついたままだった。
「あなたを捜していたの!」
 カナが駆け寄る。アイリが彼女のジャンパーを掴もうとするが、それより早くするりと体ひとつぶんヨシナオに近づいていった。
「捜していた……?」
「ええ。笑国の王、というよりあなたのお父さんに、あなたを捜すように頼まれ……っ!」
 ぴしゅん
 父親という単語に反応して、電子的な筋がカナの横をすり抜けた。カナの後ろにちょうどリョウがいたが、なんらかの力で跳ね返される。よく見ると、撫子がどこから取り出したのかわからない銀色の細長い杖を持っていたし、カイも両手に細長い紙切れを持っていた。君楊は何も持ってはいないが、両手を突き出している。
 途端、カナの持っていたワープの杖が床に落ち、その音が響いた。 そのままカナ自身が膝から崩れ落ちる。体がかくんと倒れた。

 

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