EACH COURAGE

Story - 4th:One must go abroad to hear of home [08]

第4章 絆はすぐそこに [08]

「アキラ王がどうかしたのですか?」
「あ、そうか。カイも撫子も事情を知らないのよね。実は……」
 カナがかいつまんで説明し始めた。
 自分がワープの杖で転移に失敗し、笑国へ来てしまったこと、そこで不法侵入扱いされてしまったこと、ギャグテストに合格しなかったリョウが脱走したこと、そしてそこで知ったアキラの秘密のこと……。
 ずいぶんと長く感じた出来事も、こうして話してしまえば非常に単純だった。カナの説明で足りない部分は君楊が補足してくれたので、カイも撫子もすんなりと理解することが出来た。
「そういえば、幼い頃にアキラ王の息子の誕生を祝う会が行われる予定だったということがありました」
 当時を思い返しているのだろう、撫子が頬に手を当てて考え込む。 その向かいでは、アイリが従業員に声をかけて、何事かを話していた。
「十年かそのくらい前だったかしら。たしかその時、ここ貴族国でパーティを行う予定だったのよ。でも、当日になってそれが中止されたの」
「ということは、もしかしたら笑国ではなく、国を移動している間に行動を起こしたということも考えられますね」
 君楊はあえて『捨てる』という単語を使わなかった。彼なりの思いやりがあるのだろう。
 話が進展しないまま食事を続ける。アイリがテーブルに置かれていた紙を、ひらと自分の方に持って来て眺めた。
「あらー、ミスター・ミウラの技術ねえ」
 いつの間にかアイリの隣には体格のいい女性がやってきていた。赤色のフレアスカートに、白色のエプロン。それから橙色の三角巾をつけて、手には一回り大きいバスケットを持っている。 そうしていつの間にか減っていたカナ達のテーブルにパンをひょいひょいと追加してきた。
「本当に偉大なお方よね。彼やお弟子さんたちがいなかったら、こんなに生活が便利にならなかったでしょうに」
「自分もそう思います」
 アイリが営業ボイスで返事する。彼女のかけがえの無い主人命人形(マスタードール)もミスター・ミウラの発明品だから、その返事は本心から来るものだろう。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story