EACH COURAGE

Story - 4th:One must go abroad to hear of home [07]

第4章 絆はすぐそこに [07]

「笑国の息子を捜したいんだが」
 次の日、朝食の席で口を開いたのはリョウだった。 普段その存在を疑う程無口な彼が進んで喋るのは珍しい。とはいえ暗いわけではなく、喋りだせば年相応の反応を返してくることも、この間の件で知った。
「そういえばそうだったな。っていっても手がかりも何も無いんだぜ?」
「赤ん坊の頃の画像を貰った」
 リョウが食事の手を休め、自身の衣服をまさぐる。
 宿の一階は食堂になっているという所謂ポピュラーな建物で、長方形のテーブルがところどころに置かれていた。 一辺にはカナ、カイ、撫子が並んでおり、反対側にアイリ達が腰掛けている。 テーブルの真ん中にはバスケットいっぱいのパンと、サラダの皿、卵料理が並べられていた。
 その食事を避けるようにリョウが置いたのは一枚の紙である。これも技術者ミスター・ミウラの発明品のひとつで、映像投影機器の応用版と言えるものだった。つまるところ、投影した動画像からある時間の映像を紙に焼き付けるというもので、紙こそ薄く画質もあまり上等ではないが、記録を残せるということで非常に役に立つ機械だ。
 紙に映っていたのは、細身の赤ん坊だった。近くに手が映っているのでそこから大きさを比較しても、非常に小さい身体だというのがわかる。当然髪の毛はまだ生えていなかったが、うっすらと見えるのはくすんだ金髪だった。
「捨てた割に、映像を残してあるのね」
 カナがパンを口に運ぶ。
 正直なところカナからすれば息子を見つけてしまえばリョウが自分に同行する理由がなくなってしまうわけで、出来ればそれは避けたかった。
『別に深い意味はないんだけど』
 カイに言われたことが何故だか頭をぐるぐるまわっていたので、自分に言い聞かせるように呟く。 単純に、出会った友人ともう少し長く居たいと思うだけなのだから。相手がリョウじゃなくて例えばアイリでも自分は同じ事を思うのだし、と胸中でぼやく。
 そんな風にカナに意識されているとは思っていないだろうカイと、それから撫子が不思議そうに並んで首を傾げていた。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story