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Story - 4th:One must go abroad to hear of home [03]

第4章 絆はすぐそこに [03]

 アイリとリョウがぴくりと反応した。カナは状況が分かっていないらしく、頭に疑問符を浮かべている。
「失国って……暗属性(あんぞくせい)の人達がひっそりと住んでいる国のことだろう」
「どういうことか、説明してもらえないだろうか」
 リョウの口調すら丁寧になっていた。簡単には終わらない内容だと悟ったのか、カイも近づいてくる。
「撫子様。貴女は暗属性と正反対に位置する聖属性(せいぞくせい)の当主でいらっしゃいますよね?どうして、失国を?」
「ええ、それもお話します。……皆さんは、失国がどういう国か知っていますよね」
「五大属性のうちの暗属性。その属性を持つ人たちが住む場所を追いやられた末に出来た国だよな。属性なんて今はそんなに知られてないけど、昔は結構重視されてたんだとか」
「おっしゃる通りです」
 答えるのはアイリだ。腕を組み直し、きっと知らないであろうカナに分かるように発言する。 撫子は頷いたものの、カナは左側にいたカイを肘でつついて、
「カイ、五大属性って何?」
 と小声で聞いていた。
「生まれながらに属性ってものが人には与えられるのよ。まさかそれも知らないってことはないわよね?」
「大丈夫、知ってる」
 ちら、とアイリの後ろの君楊を見る。さっき彼から聞いておいて良かった、とほっとしていた。
「属性は、大きく五つに分けることができるの。大和家を代々当主とする聖属性、それと対になる暗属性、自然の原理を扱う天属性(てんぞくせい)と地属性(ちぞくせい)、それからどれにも属さない他属性(たぞくせい)ってやつね。たとえば『風』という属性は天属性に所属してるし、『花』って属性なら地属性、みたいな感じになるの」
「ふんふん」
「でもこれって性質的なものにすぎないの。火の属性を持つからいつも燃えているってわけではないし、金って属性だからお金持ちってわけではないの。そういうのもあって、最近は属性を判定するってことは無くなってるのよね。実際私も自分の属性は知らないわ。……でも、暗属性は違う。全てを『失う』というイメージのせいで、昔から差別する人が多かったの。それを未だに引きずる人がとても多いの」
 カイの説明は非常に分かり易かった。魔法国で術を勉強する時に習ったのか、教科書にでも載っていそうな丁寧な解説だった。

 

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