困惑する撫子の隣から口を挟むのはアイリだった。撫子と向かい合わせになっているカナの右隣にひょいっと現れる。
ますますカイが何かをわめいていたが、彼女はそれを無視した。
「ちょっとアイリ!」
「横から申し訳ございません。私はカナの友人のアイリと申します。彼女の出身である四季国から一緒にここまで来たのですが、道中いくつか不可解なことがありまして……」
営業ボイスでアイリが続けた。
「彼女は四季国のパーン王から直々にこの命を受けました。ちょっとした手違いがありまして、ここへ来る前に笑国(しょうこく)へ寄ったのですが……そこのアキラ王も、カナの名前を知っていました」
「あ、そうです。王たるものなんとかなんとかって言ってたよね!」
思い出したようにカナも同意する。
「自国の王が認めた者に送るという任命証に関することをどうして他国の王が知っているのでしょう。
私が思うに、任命証に撫子様のサインなど直接いらないのではないと思うのです。ではどうしてカナが撫子様に会いに行くように言われたか。貴女ならご存知ではないのですか?」
誰もが圧倒されていた。
アイリはずっと考えていたのだろう。
カナのような娘が任命証を取りに行くということや、そのためにワープの術が埋め込まれていた杖を渡すなど、非常に優遇されていたことに疑問を感じていたのだ。
撫子はこくんと小さく頷いた。
「貴女の言う通りです。技能の任命証発行の際には、各国の王が持っている私の印のコピーを使用するのです。それを職人の元に持って行くことで代用が出来るのですから」
「えええ!じゃあ今までのあたしって一体……」
ぐったりとするカナ。そんな彼女をアイリが背中を叩いて慰める。
向かいの撫子は別のことを考えていた。
『キンチ王は……娘が来るとは言ったけど、その理由は言ってなかった。彼はゲームと言った。私が出て行けば、この子に会うのは分かっていたはずよ。だとしたら、これは』
「カナ。貴女に私からお願いがあります」
「ふぇ?」
「貴女は任命証を貰いに行け、という口実の元、とある目的の主役として抜擢されていたの。でも、その目的は私以外の王が決めたことで、私はそれに反対しています。ですからカナ、お願いなのです」
ぎゅっと、撫子がカナの手を掴んだ。
「私と一緒に失国(しっこく)を守って」