EACH COURAGE

Story - 4th:One must go abroad to hear of home [01]

第4章 絆はすぐそこに [01]

 驚いたのは当の本人達ではなく、周りだった。
「すげー偶然じゃね。にしても」
 アイリが頬をかいた。彼女もこうして直に当主の姿を見るのは初めてだったのだ。 君楊に目だけで合図をする。
「魔術力がすごいだけではありません。それを制御している……おそらく、僕が探知出来る以上にきっと魔術力が秘められているに違いありません」
「目的を果たすには、じゅうぶんってわけだ」
 ひゅうっと口笛を吹いた。その音がきっかけとなったのか、まずはカナが口を開く。
「あの、初めまして。大和撫子(やまとなでしこ)様……ですよね?」
「……あなたが、カナ・ロザリオさんかしら」
 今度はカナが驚いた。後ろにいたカイが先程から腕をぶんぶんさせていたのだが、そんな彼女も口をぱくぱくさせている。読唇術を使える者がいたのなら、彼女が何を言おうとしているか分かったかもしれない。
「どうして、あたしの名前を?」
 それはごく自然な疑問だった。ただの娘に過ぎない自分の名前をどうして彼女が知っているのだろう。公務で忙しいのならば、剣術任命証を発行する相手の名前などいちいち覚えていないと思ったのだ。
「お願いがあります。この先に……つまり、貴族国(きぞくこく)の王キンチに会いに行かないで欲しいのです」
「あ、はい。それは構わないです。あたしは撫子様に用事があってここまで来たのですから」
「私に?」
「はい」
 次に驚くのは撫子の方だった。
「貴女は、キンチ王に会いにきたのではなかったの?」
 先程キンチは『もうすぐ例の娘が来る』と言っていた。すなわちそれは少女がキンチに計画を命令するためではないのか。撫子はそう思っていたのだ。
「違いますよ。ええと、これ」
 カナがナップザックを下ろし、丸められていた書状を取り出した。くるくる、と逆向きに丸めて、不格好ではあるが真っすぐに伸ばす。そのままそれを差し出した。
「こちらに撫子様の印を貰うように、四季国(しきこく)のパーン王に言われて来たのです」
「え……?」
「おかしいと思いませんか、撫子様」

 

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