「それで、私にどうしろと?」
「……だから、統一する国を五つにするべきだ。撫子様以外、私たち王は皆そう考えています」
見目麗しい女性と、眼鏡の男性が向かい合っている。
革張りのブラウンのソファと、ガラスのテーブル。 それだけならバランスのとれた空間も、悪趣味なまでに装飾の施されたシャンデリアと骨董品が台無しにしていた。
そんな不調和な空間であったけれども、彼女……大和撫子の美しさはそのままであった。
「それで、私にどうしろと?」
撫子の言葉は先程と変わらなかった。同じ台詞を何度言ったかわからないくらいだ。だが表情からはそれを苦にするような態度は微塵も見えず、瞳はまっすぐと目の前の男を見ている。
同じ言葉を繰り返しているのはなにも撫子だけではない。貴族国の王、キンチ・メラン。彼もまた数回目になる台詞を紡いだ。
最終的にはため息。
それでも撫子は冷静だった。キンチの言いたいことを理解しているのか、そうでないのか。おっとりとした口調で続ける。
「キンチ王」
ぴしゃり、と。
「今回は本当にご招待ありがとうございます。だから……早く用件をおっしゃってくださらないかしら?」
とうとう、キンチの背中がぐったりと曲がった。これ以上遠回しにいっても仕方がないのかもしれない。
「……失国(しっこく)の存在を無くしてしまいましょう。国民にはそういうものがあると伝えて、我々との伝達は実質無くす。意味の無い国なのですから」
「そんなことは致しません」
キンチの台詞が出るのと、撫子の台詞が出るのにほとんど差はなかった。