EACH COURAGE

Story - 3rd:Nadeshiko is the Magic Country Queen [28]

第3章 魔法国の撫子様 [28]

「弱み?」
「昔、貴族国の王、キンチに依頼を受けたことがあるんだよ。ちょうどそんときの門番と今回の門番が同じだったわけ」
 カナが聞くとアイリはそんな風に答えてくれた。けらけら笑うので、一体それが何の依頼を受けたかが非常に気になるのだ。
 これだけしっかりとした国である。もしかして、はじめに自分にぶつけたような発火物のようなものを依頼されていたのかもしれない。そんなものを作っていれば、もし国家間で戦争が起きたときに大変な事が起きてしまう。
「そ、それって科学薬品?」
 おそるおそる尋ねた。 アイリは頷いて、笑いをとめる。何故か目尻には涙を浮かべており、手は腹部を押さえていた。
「毛はえ薬だよ」
 アイリの後ろで君楊がため息をついた。
 もしかしたらキンチはストレスで薄毛になってしまったのかもしれないなぁ、とカナは思う。 というのも、貴族国の都市は非常に栄えていたからだ。その名はお飾りではない。
 肝心の目的地である、キンチがいるだろう城、というより館は中心に建っていた。 草原から見ているときは分からなかったが、取り囲む壁は円上に立っているらしい。 キンチの館を中心点として円を描くように配置されている。
「貴族国は王のいるところと自分の館の距離が近いほど上流階級であることを示しているんだ。だから外の集落の人たちを見下すだけではなく、この建物内でも上下関係が存在している」
「まったく嫌な話だよ。でもそのおかげで目立った争いは起きていない。税が多いってわけでもないから、これは古いけれどある種の平和な形かもしれないのさ」
「ふうん、二人とも詳しいのね。アイリは王の依頼んときに来たのだろうけど、リョウも来たことあるの?」
 やけに内情に詳しいアイリとリョウにカナが首を傾げる。魔法国でのリョウの発言を再び思い出した。
「……」
「馬鹿ね、カナ。このくらいは歴史の授業で習う事よ。それでなくても生活する上で知ってなきゃいけないことなんだから!」
 返答に困るリョウを助けたわけではないだろう。偶然にせよカイの言葉によってリョウは発言しなくても済んだ。

 そうこうして館の前に着くと、これまた厳重な警備がしかれていた。厳重すぎた。
「てか、今更なんだけど、剣術任命証とかいうののためになんでカナがそこまでして撫子おっかけてんの?そーゆーのってなんか国家間でなんかしてくれたりすんじゃねえの?」
「うーん、それはそうかもしれないけど、まあ小旅行を兼ねたつもりだったし」

 カナの背負ったナップザックからは丸められた紙が覗いている。アイリの声からは覇気が感じられない。
「そうか……で、これはどうしょうか」
 引き返すわけにはいかない。だが進むことも出来ないでいた。
 目の前には、心持たないだろう門番が居たのだから。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story