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Story - 3rd:Nadeshiko is the Magic Country Queen [21]

第3章 魔法国の撫子様 [21]

 落ち着いたところで一行は城の方に向かう事にした。 道という道もないので建物を目印にだらだらと進む。まずはこの草原を抜けて、少しでも整備されたところに向かわねばならない。
 貴族国はたしかに貧富の差が激しく、塀の外はこんな草むらであるが別に人が住んでいないわけではない。 カナたちが到着した(というより落ちたといってもいい)箇所が草むらだったにすぎないわけで、右手には集落もあったし、所々に民家もあった。 歩くうちに、草むらをかき分けたような自然の道を発見し、それに従って進む。
「うーん、いいわねー。空気おいし〜い。あたしこーゆー雰囲気好きかな〜」
 カナが鼻歌なんかを歌いながらうきうき歩く。 その隣にはカイ。後ろにアイリと君楊が並び、ちょっと離れてリョウが着いてきていた。
「昔から、カナこういうとこ好きよね。よく出かけたわよね」
「カイは嫌がったけどね」
「懐かしいわー」
 くすくす、と二人が懐かしそうに話す。
「ところでカイさん」
 後ろから君楊が口を挟んだ。何故かカナがほっとしたようにも感じられたが誰もそんなことには気付かなかった。 歩みを止めないままカイは首だけ右に少し回転させて君楊を見る。
「撫子様にお会いしたことがあるのですか?その憧れ方ですと、もしかしてお会いしたことがあるのかと思いまして……」
 魔法国で撫子に憧れない者はまずいないであろう。けれど先ほど撫子の話題をしたカイにはそれ以上の憧れと、親しみが感じられたのだ。 んー、とカイは口をすぼめ、顔をまた前に戻す。 そしてぽつぽつ、と喋り出した。
「会ったってわけじゃないんだ。そうね……私がこっちに越して来てすぐのことなんだけど。魔術学校の申し込みに行ってね……」
 右手が、きゅっと握られる。
「両親は、二人とも術士だし。もともと魔法国に住んでたわけ。だからちょっと町並みが変わっていても馴染みのある景色はそのまま変わらなかったと思うの。 でも……私にとっては全然知らない土地でしかなかった。 四季国から来てすぐだったし、正直戸惑いしかなかったから、魔術学校の申し込みに行くときも……そう、道もわからなくなっちゃってね」
「道くらいちゃんと覚えとけ」
「うっさいわね。はじめて来た土地だって言ってるじゃない」
「アタシは初めてでも道に迷わないけど」
「……つくづく気に障る女ね。まあいいわ。それで、道に迷った私の前に現れたのが撫子様だった。そうね……さっきのカナみたいな感じだったかしら」
 カイはそこで一旦言葉を切ってカナの方にくすりと微笑んだ。
「撫子様が偉い人だって言うのは知ってたわ。だから、そこら辺にいるなんて思わないじゃない。でもそうね、そのときの撫子様の顔は絹のローブみたいなもので顔を隠されていたから……」

 

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