カナの膝の高さまでもある草がどこからともなく流れてきた風に乗ってふぁさ、とゆれる。
かなり遠くの方の城塞からもなぜか言葉が聞こえてくるような、それほどの沈黙が場を占領していく。
「ああー!どうしようっ!」
「おおおおお、落ち着いてててて、カイ!」
幼なじみらしからぬ慌てた様子にこれは大変だと思いカナが口を挟む。だがカナもカナで慌てているから話にならない。
「類友?」
「ですねー」
ニコニコ笑顔の君楊。そう言えばちょっと前もこんな感じだったなーとアイリが二人をぼーっと見ていた。
ぜえぜえと息を切らしながら、カイが拳を作る。
「いまからもう一回戻ればいいじゃない!」
「ワープで国と国を移動するのはかなりの高度の術ですよ。上級の術使いでさえ連続で使用することを避けています。ですので……そのう」
「アンタのような見習いちゃんじゃあ低レベルの国内移動をしようとしても、今の状態じゃ煙すら立たないだろうよ」
言うのは失礼だと考えたのか、途中で口ごもった君楊の後をアイリが続けた。
また揉める!カナは咄嗟に身構えたのだが、カイはアイリの言葉に反論出来ないでいた。
その通りであるし、気力も正直な所からっぽだったためだ。
カイはがっくりと肩を落とし、気付かれないようにちらりとリョウを見る。彼はどこか別の所を見ていた。もしかしたらこの地に縁でもあるのかもしれない。笑国でもそういえば貴族国から移動したとのことを漏らしていた気もする。
彼が自分に無関心な様子をみて、カイはますますため息を深いものにした。
「じゃあ、カイもあたしたちと一緒に行く?」
「へ?」