ずどどどーん
砂埃が舞う。大きな煙を発生させているそこから出てきたのはカナたちだ。
「……草むら?」
カナが瞑っていた目を開けて初めて見えたのは草だった。一面の草原。
身体はどうもうつ伏せになっていたらしい。両手で体を支え起こすと、右の膝が少しすりむけているのが分かった。
そんな姿勢にも関わらず、体が砂まみれではないのはこの場所のおかげだろう。
土が見えない程、一面に生えている緑色の草むら。よくよく遠くを見れば、右手の方に小さな集落のような物と、左手の方に大きな塀が見えた。
塀の向こうにもちらほらと建物を見ることができた。
「ふえぇ」
そんなことを漏らしながら立ち上がれば、同様に周囲を見渡しているアイリやリョウの姿が映る。無事に一緒に移動出来たらしい。そして、肝心の行き先であるが……、
「貴族国は、城塞……というか塀か。そこで囲まれた部分とそれ以外の草地。つまり庶民が住む地帯のふたつに分かれている」
左側に見える大きな塀を見て、リョウが静かに言う。
「ってことは……ここは」
「貴族国、ですね」
確信づけたのは君楊だ。
「ふふん、すごいでしょ?」
君楊の言葉に反応してそんな風に言うのは術を使った張本人、背中をぴんとさせて腰に手を当てふんぞり返っているカイである。
その様子とは反対に、腕にも額にもびっしり汗がまとわりついていて、美しい髪の毛も少々ぐったりしているようだ。それほど魔術力を消費したのだろう。
それでもワープの術を唱えきって、しかもこの人数を移動させたのは紛れもない事実である。学校で自慢したらきっと大人気になるだろう。そういった思いだけで彼女は立っていたに違いなかった。
「うん、すごいよカイ!」
「着地は失敗したけどな」
「そんなのはいいのよ!とにかく成功したんですもの、見直したでしょう?」
アイリの嫌みもあまり耳に入らないようにしている。これぞまさにプライドの成せる技だろう。
カナは笑顔で拍手しているし、君楊もそれに倣って手を叩く。アイリはからかいがいが無くなってしまい少々つまらなさそうにしているものの、認める所は認めないとと思っているのか、腕を組んで彼女を見ていた。
「で、なんであんたここにいんの?」
だが、その華やかな場はリョウによって一気にトーンダウンされた。