EACH COURAGE

Story - 3rd:Nadeshiko is the Magic Country Queen [17]

第3章 魔法国の撫子様 [17]

「きゃ」
 なんで出会ってすぐでこんなに喧嘩出来るのだろう。仲良く出来ないのは仕方ないにせよ、ここまで言い合いが出来るのもある意味才能なのではないかとカナは思う。
「じゃなくて!」
 傍観している場合ではない。我関せずをしていたリョウの背中をぐいぐいと押して叫ぶ。
「ちょっとリョウ、何とかしてよ!さっきみたいの。あんたしか止められないわよー。カイは昔から我が強いからあたしじゃどうにもならないのよー」
「やだよ。面倒くさい。こら、人を押すな!」
「面倒、の一言で片づけないでよ!ああもう、さっきの言葉は取り消し。やっぱあんた他人に無関心だわ!」
「それで結構」
「……ムカつく」
「だれも好きになれなんて頼んじゃいないさ」
「あっそ!」
 背中から手を外す。信頼していたのに、何よ……。カナは唇を噛んだ。 そんなカナの背中を小突く感触がする。振り向けばそこには君楊が申し訳なさそうに立っていて、
『御主人様、若い子いじめるの好きですから……』
 と申し訳なさそうに呟いてきた。 アイリとカイの話は流れるとこまできていたらしい。
「そこまで言うなら、あなたたちをきちんと貴族国まで送ってあげるわ!」
「無茶はしない方がいいぜ、お嬢ちゃん。アタシも死にたくないしー」
 何度目かのその呼び名にとうとう怒りを最大にさせて、発動。 カイは瞳を閉じて、何かもごもごと呟きだした。そうして、ばっと右手を天に掲げた。
「貴族国へ!」
 ローブが捲れて、右手の手首から魔術成功率を上げていると思われる装飾品が現れる。それは青白く発光していた。 やわらかな風が吹く。風がおさまるころには、カナたちの姿は魔法国から消えていた。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story