EACH COURAGE

Story - 3rd:Nadeshiko is the Magic Country Queen [12]

第3章 魔法国の撫子様 [12]

「そっかぁ……すごいや」
「カナだって、王様直々に言われて剣術任命証?とかいうのを貰うんでしょう。相変わらず剣術を続けてるのね。キオくんとか、スギハラくん、ミユキちゃんにそれから、レネルくんとかもまだ一緒に続けてるの?」
 ぴく、とカナの小指が反応した。誰も気付かないような微量の変化だ。後ろで聞いていたアイリが腕を組んで感嘆の声を上げる。
「おまいさん、初等学校の頃から剣術なんてやってたのか。そりゃそれなりに対抗できるわけだなぁ」
 アイリは、先の料理屋の出来事を思い出していた。 素早さではアイリの方が上であったが、カナはそれなりに動けていたのである。魔術や道具を使用した実戦経験が差となったものの、カナがきっちりと剣を構えていたことと多少の衝撃に強かったこともなるほど合点がいく。
「対抗?」
「あはははは、その話は長くなるからまた今度するよ」
 ……さすがによくわからない力が働いて家ひとつぶっとばしたなんて言えない。
 その場を適当にごまかして、カナが笑うがカイの頭上にハテナマークをいくらか見る事が出来た。その場を救済するためでは無いだろうが、そこでアイリが周囲を見渡す。先程より人は少ないけれど、まだぱらぱらと魔法国の住民が路上に顔を向けているのがわかった。
「ところで、あの魔術車に撫子ってのが乗ってるんだろ?」
 アイリの言葉に反応して、カイのこめかみがぴくりと動く。幸い他には聞こえなかったようだ。返事は別の方から聞こえた。
「……お言葉ですが御主人様。先ほど車内で魔術を使った痕跡がありました。術はワープの呪文。粒子の流れなどから行き先は貴族国(きぞくこく)と想定できました」
 君楊だ。彼の能力が導きだしたその回答にカナがうへぇ!などの驚きを見せている。小さく拍手してみたりもする。対してカイはというと、
「……御主人様?」
 眉間に皺は寄せたままだったが、怪訝な様子でその言葉を繰り返していた。
『あの女、最初っからいけすかないと思っていたけど……まさかこんな少年を侍らしているの?やだやだ超不潔!信じられない!』
 それまでの呼び捨て嫌悪が一瞬にして消し去られる勢いであった。 顔を真っ赤にして両手で覆う。それを不思議そうに眺めるのはカナだ。そして、あぁそっか、と手をぽんと叩いた。
「君楊はアイリの使い人形なんだよー。だから御主人様って呼ばれてるんだよ。動いているのはまあなんていうか有名な人形だからなんだって。いやぁ、あたしも最初はびっくりしちゃった」
「あ、そうなの……そうよね」
「イケナイコト想像しちゃった?」
 けっけっけ、と嫌みたっぷりにアイリが言った。ぶち、という音がどこからか聞こえ、なんだか天気も悪くなってくる。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story