「はい?」
アイリに振り向きかけていたカナが、声に反応して再び女性の方を見る。
「カナ・ロザリオでしょう、そうなのね」
カナより少しだけ目線が高かった。まっすぐに顔を見つめており、しっかりとした声だった。
それまで俯いていた顔が直立するのに伴って、フードがふぁさと音を立てて肩に落ちる。
細く、白い女性の顔があらわになった。
ローブに負けず劣らない、鮮やかで細いショートカットの水色の髪。
両耳につけられたゴールドの丸形ピアス、そして丸く大きな蒼い瞳に長いまつげ。俗に言う「美人」な顔が、カナを見据える。
「え、どちらさま?」
「ああもう何言ってるの、私よ私。あれだけ一緒だったのに覚えてないの?」
眩しい髪の毛と声がカナにたたみかけてくる。
「こんな美人にこんな風に言われるなんてあたしモテモテ?」
「アホか」
思わずアイリに話しかける。
否定されつつ、カナの脳内は猛スピードで記憶を遡っていた。遡れば遡る程、懐かしく辛い思い出があらわになってくる。そんな中、ある記憶に辿り着いた。
そう、鮮やかな水色の髪。水色の……。
「……カイ?」
果てに出たのはその名前だった。聞いて女性は嬉しそうに唇の端を上げ、パンと手のひらを合わせる。
「ええ、そうよ!よかった、忘れたわけじゃなかったのね」
「忘れるわけないに決まってるじゃないの!」
さっきまで思い出せなかったのによく言ったものだ。二人は両手を絡ませて、きゃあきゃあとわめき始める。