車は非常に大きかったので、近くに見えていても案外遠くにあったのかもしれない。
追いかけるうちにカナはいつの間にか人気の無い所に来ていた。
「おっかしぃなぁ……さっきまでそこに見えていたのに」
追っていたはず、止まっていたはずの車の姿はいつの間にか見えない。
ルートから外れてしまったのか、人気もない。
どうしたらそこまで道を反れることが出来るか非常に謎だったが、今回ばかりは幸いした。
あのまま横切って魔力車に近づいてでもしていたら、周りの国民に何をされるかわかったものではないからだ。
魔法国は国民が信仰心にあふれている。
そのため規則を守らなかったり抜け駆けをすることは好まれていない。
重大な出来事の場合は国民全員が一丸となって罪を下すこともある。
もっとも、そんなことは一年にあるかないかで、これといって大きな事件もないのが特徴だった。
カナの住んでいた四季国の中心街サマリも確かに平和だったが当然裏街道なるものも存在している。都心部であるからこそ生じてしまうそれらが、魔法国には一切無いのである。
また、規則には煩いけれどそれ以外のこと、例えば人種や身分による差別も無いゆえに魔法国は安全で平和なのだ。
一歩間違えれば先程までの行為は『ルール違反』として罪に問われる危険もあった。
そのため道に迷ったこともこの場合では悪いことではなかったかもしれない。
当の本人はつゆ知らず、いつの間にか先程と雰囲気の違う道に出て来ていた。
「あっれー……。あたし、なんでこんなとこいるのかしら」
車を見失ってからの彼女は本来持ちうる性質を発揮したように見えた。彼女は方向音痴だった。
ぶんぶんと首を振って周囲を観察する姿が田舎者丸出しである。