「あ、魔術車止まった」
「へー、そう」
相変わらず周囲を気にしない様子でそこに居たカナは前方からやってきた大きな車が動きを止めたのを遠目に確認した。彼女の視力は人並み程度には良い。
どうでもいいという感じで適当に相槌を打つのはアイリだ。君楊とリョウも特に気にした様子がなく、周囲を観察しているだけである。
「ちょーどいいや。あたし、行って来るね」
それが仇となったのだろう。カナはそう言って人混みをかき分けて進んで行くではないか。
順路にほぼ垂直に横切る形のため、周りの人からは迷惑そうな目で見られてしまう。
これから車に乗った『撫子様』が自分達の前を過ぎようとしているのだ。
そんなときに横入りをする若者は……と、そんな視線を痛い程感じることができる。
「行くって、ちょっと、おいカナ!」
慌ててそれを止めようと、アイリと君楊、しぶしぶとしたリョウが後を追った。