EACH COURAGE

Story - 2nd:An encounter and request [22]

第2章 出会いと依頼 [22]

「お前らグルだったのか?初めからこうする作戦だったのか?」
 アキラが何やらわめき散らしている。兵はぴくりとも動かない。 おそらくはそれまでは自己判断で動いていたのだろうが、偶然場に自分達の主人が居たのでは様子を伺うしかないのだろう。各々物騒な凶器を持って、カナ達から目を離さない。
 こちらの陣営では、カナがアキラに負けないほど慌てふためいていた。 妙に冷静なのはアイリで、この状況になっても食事を続けている。案外グルメなのかもしれない。 リョウは相変わらず何を考えているかわからないし、君楊はまだ動きを止めている。その様子は非常に人形らしく、またどことなく可愛かった。
「お手並み拝見というところですかね〜」
「……?」
「いーや、別に。さすがになんか勝算はあるんだろ?」
 アイリがぼそぼそとリョウに呟きかけた。相変わらずの人を馬鹿にしたような笑みが唇の端に現れる。 その様子がアキラのカンに触ったのだろう。
「やはり何やら相談しているな!ええい皆のもの、こやつら全員を捕らえよ!」
 声が部屋に反響するやいなや、動かなかった兵士達は一斉にカナ達の方に向かってきた。といってもそんなに広いわけではない。数歩進めば直ぐに腕を掴むことが出来る。
「きゃぁ!」
 カナの腕が後ろからグイ、と引っ張られた。思わず倒れ込みそうになるのを腹筋で支える。続いて逆の手を今度は体に平行に引っ張られる。
「痛い痛い!」
 よく見ればほとんどがカナに集中狙いをしているようだった。アイリは最後に見たときのままスープをすすっていた。彼女の周りには薄緑色の光の膜がうっすらと見える。隣には動き始めた君楊の姿があった。
「手は出すなよ、君楊。あとカナの方を」
 アイリが指を鳴らす。
「あちぃっ」
 カナを掴んでいた兵士が反射的に飛び退いた。直ぐさま他の人たちがつかみかかるが、彼らも同じように飛び退くため、いつの間にかカナに触れようとする者は居なくなっていた。
「……どうなってるの?」
「発熱の術をかけさせていただきました。既に人がいたのでバリアは無意味になってしまうと思いましたからね。カナさんには何の影響もありませんが、触れる者はひどい熱を感じるはずです」
「なるほど。ありがとう、君楊」
 ほっと胸を撫で下ろす。
「くそっ」
 気づけばリョウはテーブルの反対側、アキラの目の前に立っていた。いつの間に移動したかはわからなかったが、アキラはテーブルから少し距離を置いていたのでリョウの体ひとつ分のスペースくらいは確保できていた。
「良かった。食べ物は無事なのね」
「おにーさんの姿を見た途端食べ物とは、アンタも呑気だねえ」
「……」
 アイリだけには言われたくない、とカナは思う。
「へっ」
 リョウはたじろぐアキラの様子を見て軽く笑った。
「何だその笑いは!人を馬鹿にしおって!今すぐ死刑だ、ええい、死刑だ!」
「できるもんならやってみな」
 逆上するアキラといつまでも冷静なリョウというのが、一国の王と脱獄犯という立場並に対照的だった。身長はリョウのが低いのになぜだか見下されている様子にはとても思えない。 もし状況というものが擬人化していたとすれば、当然脱獄犯のが悪いと言うに違いない。なのに、この不思議さは一体何なのだろう。
「ふはは、私に出来ないと思うのか?」
「あぁ。あんたにゃ無理だね。理由は二つある」

 

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