EACH COURAGE

Story - 2nd:An encounter and request [21]

第2章 出会いと依頼 [21]

 ガラスの破片がカナ達のいる部屋に飛び散った!テーブルで食事をとっていた四人の視線が、音の発生源に奪われる。
「リョウ!」
 叫んだのはカナだった。その声を聞いて入ってきた人物が驚く。どうやらカナ達がここにいるのにまだ気付いていなかったらしい。
「……はちあわせかよっ」
「え?」
 カナには言っている意味がわからなかった。アイリはそんな状況でも手を止めていないが、思わぬ事態に驚愕してはいるらしい。一番驚いているのは意外にも君楊で、口をあんぐりと開けて入ってきたリョウを見つめている。
「ど、ど、どしたのっ?」
 思わず席を立って、カナが叫ぶ。ほぼ同時にリョウが開けようとしていた扉が開けられ、数人の使用人が現れた。
「見てわかんね?」
 リョウがテーブルに近付いてきて、ドアの方を右手の親指で指し示す。
「あ、王!」
 ちょうど指した方から入って来ていた追っ手の一人がアキラに反応した。息を切らしていないところを見ると、兵士の教育はなかなかのものらしい。彼はこの場にアキラがいるとは思わなかったのだろう。拍子抜けしたように尋ねるが、アキラはものすごい勢いで立ち上がった。
「一体これは何事だ?何があった、何の騒ぎだ。……脱獄か」
 アキラが一気に捲し立てた。だが聞くまでもない。 先ほどまで自身が閉じ込めておいた人物がこの場に出てきている時点で脱獄以外のなんでもないだろう。 手を伸ばせば掴むことが出来そうなほど近くまで来たリョウを見て体をふるふると戦慄(わなな)かせる。
「へぇ、鍵開けなんてできるんだ。牢屋の鍵はドアの鍵と違って特殊なんじゃなかったっけ。それとも力尽く?」
「いや、そういうわけじゃない。というか、お前がなんで牢屋の鍵が特殊とかいうことを知ってるんだ?」
「まあ、いろいろあるからね」
 アキラを無視している二人。質問に質問で返すが、アイリはそれを軽く流して、パスタを更に食べ続けている。
「しかし、アンタのせいでアタシらまでとばっちりをくらいそうなんだけど」
 つるん、とフォークに巻き付けた麺を鮮やかな唇が吸い込む。肘をついた左腕は顎を軽く支える働きをしており、お世辞にも行儀が良いとは言えない。
「ちょっとアイリ、そんな言い方ないじゃないの!」
「だってよカナ、この状況を見てみろよ」
 自分の方に向けていたフォークで周りを指し示す。
 テーブルの側に来たリョウ。座ったままのアイリと君楊。とりあえず動いてはいないが立っているカナ。 顔を真っ赤にして怒りを体中に表現しているアキラ。 極めつけに、いつの間にそんなに増えたのかわからないが、リョウを追ってきていた兵によってテーブルは取り囲まれていた。

 

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