案内された部屋はあまり大きくはなかったが、壁が明るい彩りであるのと、正方形だったため非常に開けた空間だと言えた。
家具も少なく、丸いテーブルが中央に位置しているくらいである。絨毯の色は青色で、風景画が壁にかかっていた。
観察しているうちにドアをノックされる。
「失礼します」
入ってきたのは二十歳位の女性だった。彼女は静かに扉を閉めると手で椅子を示した。腰掛けろという意味だろう。
テーブルの周りには六つほど肘掛け付きの椅子が並んでいた。窓を左手、扉を右手に向けて三人が腰掛ける。
白のクロスがかけられたテーブルの真ん中には薔薇の一輪挿しなんかが置いてある。ギャグひとつで感情を起伏させるアキラに似つかぬその部屋の様子に、なんだかカナは少し笑いたくなった。
そんなに広くないとはいえ、城の一室なのだからそれなりのスペースではある。
カナ達が入ってきた扉以外にも二つ扉があった。入り口から見て左右にひとつずつ。隣の部屋から繋がっているようだ。よく見れば風景画も同様に二枚対照的に壁に飾られていた。
そのうちのひとつを視界に入れて、カナはぼうっと意識を惑わす。
『まあ、よく考えたらあんなでも一国の王なのよね』
普段触れるような事の無い場に、今度は緊張が走る。
笑国でこれならば、魔法国ではどうななってしまうのだろう。
そういえば、と思い出す事があった。捕らえられた際に没収されたワープの杖と、大事な青い鞘に入った剣。杖も大事であるが、なんとしても剣は返してもらわなくては。
こんなに剣と離れているのも久しぶりだと思った。自分がこんなに不安定なのはもしかしたらそのせいかもしれないとカナは思う。
「まもなく王がいらっしゃいます」
女性はそれだけ言って人形のように動かなくなった。隣に座る君楊は部屋の様子を観察して『きれいですねー』と呟いている。身長が低いため足が床につかず宙ぶらりんになってしまっているのだが、彼の方が非常に人間らしい。