EACH COURAGE

Story - 2nd:An encounter and request [08]

第2章 出会いと依頼 [08]

「まあ、これからどうするかだ」
「間違えたとは言え不法侵入しちまったのは事実だしな……。んー、そうだな。どうしようか?君楊、なんかいい考えある?」
 リョウはカナを相手にしようとはせずに、アイリに話をふる。彼女はそのまま君楊に疑問を投げかけた。
「ワープの杖もとられてしまいましたしね。そうですね、カナさんがパーン王に撫子様に会えと言われてるのは事実なんですから、それを伝えたらどうです?」
「まぁやっぱそれしかないわな。うし、んじゃカナ、そっから見張りに叫ん……」
 君楊をじっと見ていたアイリがカナの方に注目したが、彼女の姿はそこにはなかった。 代わりに、少し離れた鉄格子の側に金髪の少女がいた。片手はそれを掴み、反対の腕は隙間から伸びていて、ぶんぶんと大きく横に振られている。
「ねーちょっとそこのおじさーん。聞いて欲しい事があるんだけどー」
 一同、唖然。
「ねーってばー!聞いてんの?あ、分かった、耳がないんでしょ」
「聞こえとるわっ」
 がっしがっしと鉄格子をつかみ、肘を曲げ伸ばしするカナが文句を吐き出す。見張りは頑なに無視を決め込んでいたが、ちょっと挑発したらすぐに反応した。
「聞こえてるならさっさと返事しなさいよ」
「……捕まってるのになんでそんな偉そうなんだ……」
「あたしだからよ」
「……」
 がっつり仁王立ち。胸を張って答えるカナに、見張りは疲れたように肩をおろした。 それを見たアイリはくっく、と声を上げて笑ってるし、君楊はあまりの展開にただただ呆れている。リョウはうたた寝しかけていた。もはやカオス状態だ。
「あたしは四季国の王サマに、撫子様に会いに行きなさいって言われてるの。こっちに来ちゃったのはそりゃ申し訳ないけどさ、ただの手違いなのよ。だからごめんなさいさっさと出してって王サマに伝えるか、その王サマを連れてくるかとっととどっちか選びなさい」
「だからなんでそんなに偉そうなんだ……」
「だってあたしだもの」
「……聞いてきますとも」
 なんだかちょっと涙をはらはらと流しながら、見張りは階段に向かっていった。姿が見えなくなり、足音も無くなった頃、カナが三人の方に満面の笑顔で振り向いてくる。右手は腰に当て、左手でつくるのはピースサイン。
「いいね、カナ。あんた面白いわ、やっぱ」
「いいんですか、アレ……」
 君楊は見張りに同情した。

 

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