「あ、あたしはカナっていうの、それで……」
カナがくるりと後ろをむいた。
そこに座っていたはずの青年は、いつの間にか自力で立ち上がっている。エメラルド色強い眼差しは、トマト事件から一切変化がない。その瞳がこちらを見つめている。
「あっちが、リョウ。えーと、いつから、起きてた?」
「その女が『世界中のいろんなものを集めながら旅してる』って言ってた辺りから」
「そうなんだ。じゃあ、彼女の事情はわかったのよね。そういう事みたいなの」
カナが再びアイリの方に向き直った。リョウが身体ごとこちらに声を投げかける。
「ちょっとまて、その言い方だと、俺も同行ってことかよ」
「そうだよ。そりゃそうでしょ」
「さっぱり理解出来んのだが……」
「……ダメ?」
「ダメって言うか、理解に苦しむ」
「じゃあちょっとした用心棒で」
「さっき魔法国にちょっと行くだけって言ってただろう。用心棒とか必要ないんじゃないか。それにそこの二人で充分だと思うが……」
「けちー」
その発言にいらっとしたのだろう。売り言葉に買い言葉の勢いで、リョウはぶっきらぼうに呟いた。
「タダじゃひきうけんぞ」
「身体はやらないわよ」
「誰がそんなもん欲しがるかボケ」
「ボケっていったわね!なによこのトマト!」
「トマト言うな!」
子供のような言い合いを、アイリがぽかんとしてみている。そして、突然くくく、と笑い出した。
「あははっ、あんたら、面白いよ。サイッコー」
げらげらと笑いまくるアイリを、今度は二人がぽかんとして見つめる番だった。
気付けばそこには床などは全て無くなっていた。何もない草むらの上、三人は座ったままその場からしばらく離れることなく、少しばかり疲れを癒そうと横たわった。
奇妙な四人は、こうして四季国を出発することとなる。