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Story - 1st:On a fine day of summer [29]

第1章 ある晴れた夏の日に [29]

「ちょっとちょっと、貴女達!ねえ、返事してよう!」
 女と君楊の間に陣取ったカナが座ったまま喚く。ばたばたと床を叩き、木の破片と、ついでに埃を周囲に巻き起こし、はっきりいって散らかしているにしか過ぎない。
 何故か屋根が抜けたそこには日射しがちょうど差し込んでおり、カナの背中が心地よい熱を持った。
「ん……?」
 漏れた声は、女性のものだった。聞いた瞬間、カナの顔がほっとする。
「良かった!大丈夫?」
 カナがぱたぱたと女にかけ寄った。頭を抱えながら女が身体を起こす。
 目を覚まして自分を認識した後、ものすごく眼前にカナの姿を捕らえれば、女は朦朧とした意識を投げ捨ててばたばたと、後ろに下がった。つまり、カナから遠ざかった。
「ちょっと、なんで離れてくのよー」
「ちょっと、じゃねえ!お前、何者だ?なんなんだ、あの力は!」
「いや、あの、なにがどうなったか聞きたいのはあたしの方なんだけど……」
「……記憶にないのか?」
 驚きを浮かべて女が尋ねた。カナがこくこくと頷く。そのリアクションに、女は逃げる必要はないと考えたのか遠ざかるのをやめた。
 座ったまま君楊の方に近付き……つまりカナの方に近付きながら口を開く。
「アタシもすぐ気を失ったからわからないけど……この有り様はあんたがもたらした力の結果だ。突然光出したと思ったら、これだぜ?君楊が家を壊さないようバリアをはっておいたんだけど、それすらも破いちまった。もっとも、あんたが攻撃をしだす直前の君楊は自我を失いかけてたから、そのバリアの利き目もあんまりなかったかもしれないけど」
「……あたしが家の崩壊をやったの?でも、なんで……?」
「だから、その『なんで?』にはあたしは答えられない。っていうか、こっちが聞きたいくらいだって、さっきも言ったろう、なんなんだ?見たところ、あんたの持ち物に関係しているみたいだが……」
「持ち物っていってもなぁ。この剣とか?あ、剣の名前はレネルって言うの。あたしが名付けたんだけどね」
「……それがアンティークならともかく、普通の量産品にしか見えないけどな。真意はどうだか知らないけど。とにかく、あれは魔法の力に近いよ。いいかい、魔術じゃない。魔法の力だ。しかも、あんたには微弱の魔術力しかなかったのに、突然溢れだしたと思ったらこれだ」
 女が饒舌になる。

 

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