第13回文学フリマ C-02にて出展!




当サークルの看板作品の異世界ファンタジー、新刊は3巻&4巻同時発行です。
もちろん舞台はおなじみ、魔術と機械技術が発達する世界。
6つの国によって構成されるここで、お人よしで明るさいっぱいの少女の望みとは?
長い目で見れば一続きのお話ですが、シリーズ毎に舞台もメインストーリーも異なります。
是非お好きな巻からどうぞ!

全て文庫サイズ、フルカラーカバーとフルカラー栞がついてきます!
★☆★シリーズ既刊についての詳細はこちらをどうぞ!★☆★



第3巻:158ページ/500円

第4巻:160ページ/500円

第1巻:90ページ/300円

第2巻:180ページ/500円

---Sample(3巻より)---------------------------------------

「なんだオマエ。気味ワリィな」
 自分をじろじろと見てくるジュリアンに、半ばキレた状態でリョウが言った。
「オマエじゃねえ!ジュリアンだ。お前こそ、名前はなんだ?」
「リョウだけど」
「……よし、リョウ。いいか、オレの質問に三秒以内で答えるんだ。いいか?あんた今まで何人の女の子に告白された?」
 一、二、三。
「……さぁ?」
「ちくしょう!分からないほど告白されてるんだな……オレはお前みたいなヤツを見てるとむかついてくるんだよ!世界の美女はオレのモンだ〜!」
「あぁ……またはじまってしまった……」
 リカードが困ったように、しかし悲しいくらい慣れた口調で呟いた。
「なんだ、お前。まさか隣に居るカナちゃんは恋人なのか!」
「ちょ、ちがうわよ!こんなやつにそんな感情ないわ!」
 思わぬ発言にカナが慌てて返す。何故か左後ろからの視線が恐い。きっとカイであろう。自分の腰につけたコバルトブルーの鞘をいつもよりしっかりと握って、カナは精一杯否定した。
「そういうこと。オマエ、なんか勘違いしてるよな。あと、いろいろ聞いてくるけど、俺いきなりそんなこと言われなくちゃいけない理由とかないんだけど」
「ぐあああああああああああああああ!それがむかつくんだよ!おい、リョウ!オレと勝負だ!」
「はぁ?」
「ナンパ勝負だ!オレがお前よりカッコイイってことを見せつけてやる!」
「断る」
 わずかコンマ三秒ほどでリョウが即答する。
「そうですよ、リョウさんにナンパなんかさせたくありません!」
 割って入ったのはカイだ。自分がリョウの隣に居なかったがゆえに恋人疑惑もかけられることのなかった悲しい十六歳。絶賛リョウに片思い中なわけで、当然そんな相手にナンパとかしてもらいたくない。怒り気味の口調と、腰に手をあてて反論姿がどこか可愛らしく、言葉を投げかけられたジュリアンの頬が染まる。
「!あああ!可愛い!美人だ!君、名前は?いや失礼。オレはジュリアン・オルガリー。四月五日生まれの十八歳。貴女は……?」
 立っているカイに対して、ジュリアンが片膝をついて立つ。左手は胸に添え、右手を伸ばしてカイに捧げる。まるで漫画にでも出てきそうなわざとらしいポーズに若干驚きつつ、とにかくさっきまでの怒りをどこかにやってしまい、カイは思わず反射的に答えてしまった。
「え、あ、カイ・ユナイティスです。十一月生まれの、十六歳……」
 しかも正直に生まれや年齢まで述べてしまった。
「ふぅ〜ん、カイちゃんかぁ……」
 そしてまた胸ポケットからメモ用紙を取り出したとおもうと、アイリやカナの時よりも時間をかけて、なにやらさらさらと記載し始めた。
 時間をかけたといってもものの数十秒である。再びそれをしまい込み、改めてリョウに視線を投げた。
「おい、リョウ!勝負だ!ナンパ……」
「だから断るって」
「……ハン、逃げるってことか」
「あーいいよ逃げで。別に俺痛くもかゆくもないし。はいはいジュリアンの方がかっこいいですよ」
 リョウがいつになく饒舌になる。物珍しいのか、カナ達もそれを面白そうに見てしまっていた。
「うわすげーむかつく。ふん、条件をつけても戦わないっていうのか?」
「ヤダ」
「くっ……むかつくな。あ、お前達この洞窟に財宝探しに来たんだろ。でも残念だな、もう残ってるものはオレとリカードで全部回収しちまった。元々残り財宝は少なかったけどな、一番の宝石が残ってたんだぜ。もしお前が勝負に勝ったらそれをやるよ」
 ジャララン
 音と共にジュリアンが布袋を取り出して、投げた。音から察するに、中身にはかなりの重みがあるだろう。
 リョウの目が一瞬だけそれに反応した。だが、すぐにやる気のない目に戻り、再び口を開こうとしたそのとき、
「よしわかった、それをくれ」
 カナとは逆のリョウの隣へ、アイリがいつの間にか移動していた。
「おまっ……」
「なに、おにーさんなら大丈夫だろう。宝は山分けでよろしく」
「ちょ、何言ってるんだおい……」
 リョウが慌てて反論するが、ジュリアンがおかしそうに笑い出したので抗議する余裕もない。
「ははは。勝負してお前が勝ったらの話だけどな!まあオレが負けるわけないんだけどな」
 両手を腰に当てると、めいっぱい背中をそらして、高らかにジュリアンは笑い出した。狭い洞窟のため、声が大きく響き渡る。
 やりとりに興味のなさそうなキョウカはそこらへんを探索していたが、いつのまにかリカードと撫子は隣に並んで立っていた。
「彼、いつもあんな感じなんですか?」
「否定は出来ないんですけど……まあ、あれも彼のいいとこなんで許してあげてください」
 呆れつつ、ジュリアンを見るリカードの顔は、なんだか物悲しそうだった。
「姉を二人持つゆえに、女性に対する接し方がよくわからないんですよ、彼」
 私は女性扱いされてませんしね、と軽くリカードが苦笑した。その表情から、リカードにとってジュリアンが特別な存在なのだということが分かる。
「複雑ですね」
 撫子の言葉に、リカードは目を細めて笑うだけだった。
「でも、これだとオレになにもないな。アンフェアだ。よーし……」
 笑いを止め、再び直立する。肩幅くらいに足を広げ、片方の手を顎に添える。再び考えるポーズである、姿勢を変えるたびに、髪の毛が動物のしっぽのように動いていて、身長も高いし美形にもかかわらず、何故か小動物を連想させた。とにかく、オーバーリアクションなのであろう。
「じゃあ、カイちゃんをオレのアドレス帳ナンバー一〇七に登録する!」
「は?アドレス帳?」
「今までジュリアンがナンパして成功した人のリストの事です……」
 首を傾げるカナたちに、リカードがフォローを入れてくれた。
「案外マメなんだ」
 カナが淡々と感想を述べる。正直面白そうなので、勝負には興味があった。
「カイ、いいのか?」
「え、あ、はい」
「よしこれで決まりだな。待っててね、カイちゃん」
「……女たらし」
 カイに向かってウィンクするジュリアンを見て、リョウはぼそりと呟いた。
「なんか言ったか?」
「べつに」
「そうか。よーし場所はどこにすっかな……」
 そして再び考え出してなにやら呟き始めるジュリアンを横目で見つつ、リョウは胸中で呟いていた。
『こいつ、アブネー……』
 そして、にやにやとして立っている自分の横のアイリと、顔を赤らめてまんざらでもない様子のカイ、更には自分に全く興味のないと言ったカナを順番に見た。
 深いため息。
『宝石はまあ興味あるとして……なんで俺が。ナンパなんてやったことねーよ……』

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学生オーケストラもの小説、のこりわずかです

第13回文学フリマにて発行させていただいた、『アルペッジョの祝典』
こちらも残りわずかとなってます。
お早めにどうぞ!

★☆★シリーズ既刊についての詳細はこちらをどうぞ!★☆★

第2巻:182ページ/700円

第1巻:完売御礼

番外編:100円


---Sample---------------------------------------

 チューニングが終わると、舞台は一気に静かになった。
 客席から、少しだけ咳払いの音が聞こえる。まだ春と言うには寒い、三月のホール。それでも舞台は照明のせいでやや暖かく、僕の膝の上にある金属のコンディションはばっちりと言えた。
 舞台向かって左端。つまり僕からみたら右前の方から、二人分の影が現れた。一人は指揮者。もう一人は、僕の同級生の田原くんだ。彼らの姿が舞台に降りると、演奏者は各々足踏みをして、拍手の代わりに音を鳴らす。それと同時に、客席からは大きな拍手が降り注いだ。まだ鳴りやまぬそのまばらな衝突音に答えるように、二人は舞台から客席に向き直る。
 指揮者の先生が、大きく両手を挙げた。そのまま、体をゆっくりと下ろす。タイミングをあわせて、原田くんも綺麗にお辞儀した。彼らの頭が元に戻ると、水を打ったように一気に舞台が静まった。ぱら、ぱらとのこった拍手がすこしだけ残り、やがてそれも全て消えた。
 指揮者の先生が、舞台に背を向け、僕たちに目配せをする。原田くんといえば、指揮者と僕たちの間に置かれたグランドピアノに、ゆっくりと腰掛けた。そのまま、視線は指揮者のもとへ。掛けた黒縁の眼鏡越しに、長い睫の瞳が、真っ直ぐにその姿を射る。
 その視線に答えるように、指揮者が軽く頷いた。そして、オーケストラのメンバーを左から右へと見る。再び、頷く。ここまで、約三秒。長い、長い三秒だ。
 そして。
 指揮者がようやく手を掲げた。
 距離が離れているここまでも、ずいぶんと聞こえる。ふぅぅっ、と、大きく息を吸い、肩から腕を大きく持ち上げる。その動きにあわせて、ピアニストの体も揺れた。
 重く、暗いピアノの和音が、そこに響いた。高音と低音が、交互にそして次第に強くなるように音を出す。ピアニシモから始まったその和音がフォルテシモまで上がると、音量とは異なって、音域はダン、ダン、と下降系を形取った。
 その勢いのまま、スピードをつけてアルペジオがやはり低音域でうごめいた。いつのまにか、弦楽器が楽器を構えており、ピアノを前奏として、彼らが一気に動き出す。
 ゆっくりとした低弦のボーイングで、重く悲しいメロディを紡ぐ。ピアノは、まだ初めの音のままだ。オーケストラと一体になって、ゆっくりと左右に動く。
 金管楽器も続けて出番を待った。山を描くような、音のフレーズを、盛り上がりと共に描く。それまでが深いよるだとすれば、そこで雲が広がるような感覚を味わうようなものであった。
 指揮者の右手がふっとこぶしを作った。明け切らない空のように、だがしかし雲の妖精が色っぽく、オーケストラ全体にささやきかける。再びピアノの音が全面に現れると、複数の人間に負けない音量で、やはり色気のある音で妖精に言葉を返した。ささやくような流れは、これから起こる悲しい現実を表しているようでもある。

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<収録曲>
・バッハ ブランデンブルグ協奏曲/・サン=サーンス 死の舞踏
・エルガー 威風堂々/・ドリーヴ バレエ組曲コッペリア
・ウェーバー 魔弾の射手/・ラフマニノフ 交響曲第2番
・ブラームス 交響曲第4番/・チャイコフスキー バレエ組曲くるみわり人形
・ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番/・ベートーヴェン 交響曲第7番


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