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Story - 3rd:Nadeshiko is the Magic Country Queen [01]

第3章 魔法国の撫子様 [01]

 自分でも何故あのような行動をとったかわからなかった。 ただ思うのは、せっかく出会ったのに「はいさようなら」となるには淋しくてたまらなかったということ。 いつから自分はこんなに弱くなってしまったのだろう。
 多分……あのときからだ。『あのとき』から自分は独りにされることをずっと怖いと思ってしまうようになったんだ。
 多少の疑問や迷いが拭いきれぬままであったが、カナは魔法国(まほうこく)で任命証をもらった後の行動を決めていた。 リョウの手伝いだ。 アイリはカナの旅行中のみ同行する、という約束の元一緒にいる。そのため、カナがリョウの手伝いをすることでちょくちょく家を出ることになれば彼女もきっと一緒についてくるはずだろう。 そのあとは……それが終わった後は、二人さえ合意すればうちの近くに住んでもらったっていい。もう誰も、自分の前から失いたくない。
 そう、誰も失うわけには。いかない。
「カナ?」
「へっ?」
 思っていた以上に深い思考に飲み込まれていたらしい。アイリから投げられた声に反応したものの、非常に間抜けな音を発してしまう。
「大丈夫ですか?魔術力の放出で疲れていらっしゃるのでは?」
「単に魔法国の規模に圧倒されてるだけじゃないのか」
 そう。アイリの言うようにカナ達は先程無事に魔法国へ到着していた。
 ワープの杖が術の力を秘めたアイテムとはいえ、やはりそれの発動には使用者のエネルギーを消費してしまう。 それがある程度魔術力のある人物なら多少平気鴨知れないが、カナのように魔術力皆無の肉体派にとっては、やはりどこかで魔術力の干渉を受けるために、通常以上のエネルギーを消費してしまうと研究の結果分かっていた。現在、それを解消するための開発がされているらしいが、まだ実用化には至っていない。人々はそのたびに、『伝説の技術者ミスター・ミウラは一体どこへいってしまったのか』『大和家とミスター・ミウラが協力すれば、この世界の魔術と機械技術はさらなる発展を遂げたに違いない』と漏らすのだが、そう言っても行方の知れない人物なのだから仕方がない。
 カナ達がここへ移動したことにより、杖の効力は残り一回分となった。この一回は魔法国で用事を済ませた後、四季国(しきこく)に帰るのに使われるだろう。 カナ念願の国外旅行は残念ながら笑国(しょうこく)への寄り道という形をとってしまったが、それを忘れるくらいここ魔法国は広大でにぎやかな街だった。 ちょうど着いたのは中心街だった。アイリが近くにあったプレートを読み上げたところ、ここは大和家(やまとけ)の納める城下町にあたるらしい。
 笑国はひとつの城とひとつの城下町だけだった。 四季国にはカナの住んでいる城下町サマリとそれ以外にも大きな街は数カ所存在している。 だが、魔法国の城下町の規模とは比べものにならない。 ここの城下町はぱっと見で分かる程華やかであり、一通り観光するには最低でも一週間は必要になる位の広さを持ってた。
 そのためアイリの言うように圧倒されていたとしても決しておかしいことではない。
「規模っていうより、この場合……」
「騒がしい」
 カナの返答を受け継いだのはリョウだ。

 

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