EACH COURAGE

Story - 2nd:An encounter and request [01]

第2章 出会いと依頼 [01]

「不審者は捕まえるのが鉄則だよな」
「……ごめん」
「俺は好きで付いて来たわけじゃないのに、なんなんだこの仕打ちは」
「……ごめんってば」
「無理もないでしょう。そもそも魔術力の欠片もない人間にワープの杖を使わせるという事に問題があったのかもしれません」
「……ねえ、ごめんってばぁー。無視しないでよー」
 胡座をかいた茶髪の青年、片膝に腕をついている状態の黒髪の女性、正座を崩したような姿勢の少年。 その三人とやや離れた箇所に金髪の少女がうずくまっている。
 ところどころ薄汚れたグレイの壁を照らす小さな灯だけが光源だ。空間が暗ければ雰囲気も暗い。 光を差し込むべき窓はひとつも無かったが、少女の手首ほどなら通せそうな鉄格子が、対して高くもない天井の近くにあるのが見えた。 そこが牢屋を連想させる場所であると認識できる。決定的なのは、彼らがいる狭い空間の入り口も同じような鉄格子がはめられており、その向こうには役人とおぼわしき風貌の男がしっかりと立っていることだろう。
「ぷっ」
 その男が、彼ら四人のやりとりに吹き出した。
「ちょっと!そこの!なーに笑ってるのよ!」
 他三人に無視されている状態の、金髪の少女がその笑いをとがめた。フラストレーションがたまっているのか、心持ち声が大きい。オーバーリアクションさながらに、口をすぼめてクレームを発している。
「いや、お前らは不思議な団体だな。盗人の団体にしては、チームワークがバラバラのようだし。それでよく我らがアキラ王の城に忍び込もうと思ったな」
 看守(と読んでも差し支え無かろう)が、侮蔑の笑みを浮かべて言ってくる。 少女は更に表情をムッとさせたが、彼女が何か言う前に黒髪の女が手をひらひらさせて言葉を返した。
「悪いね。残念だけどアタシらは盗人でもないし、出会ったのはほんの数時間前だよ。こんなことになったのは、全部そこのカナのせいさ」
 カナ、という名前を呼んだときだけ、やる気のない手のひらが金髪の少女に向けられた。 またしても分が悪くなったのか、カナ少女の勢いが減少する。
 そこで看守との会話も終了となったのだろう。再び重い空間と暗い雰囲気が辺りに立ちこめる。
『なんで、こんなことになっちゃったのかしら……』
 それというのも、ちょっとしたミスがあったからなのだ……。

 

PREV / TOP / NEXT

 

▲Jump to Top

▼Return to Story