C82お疲れ様でした!

[2012-08-13]


夏コミありがとうございました! 個人でFF3作品を出すことはおろか、ブースを取るのも初めてで本当にどきどきした一日でした。そして何を考えたか2冊同時に発行した新刊。おかげさまでたくさんの人に見ていただく機会に恵まれました。事前情報も過去の参加も全くない、しかも小説サークルで、中身も見ずに即決してくださった方も立ち読みして購入していただいた方も本当にありがとうございました!
冬コミに続きを出します。やっぱり2冊、がんばります。時間がないのでもう急がなくては……。

更に、何故かオリジナル小説を手に取ってくださった方もいらっしゃって、「何故!?」と聞きたかったんですがありがとうございましたー。本当に、創作小説でやっている身としては、読んでくださる方がいるだけで感無量です。


当日は、相変わらず智胡さんにおんぶにだっこ。ちょろりさんも帯巻き作業ありがとうございましたー;;
搬出時はiNOさんが荷物を運んでくれて助かりました。……それにしても、搬入時のゆうパックはどうしようかと思いましたが(各所のまとめを参照)、2日目以降は改善されていたようでよかったです。ありがとうスタッフさん!

2日目も売り子で終始参加していたので、まだ戦利品を読むことはおろか自分の荷物の整理すら出来ていません。片付けを終えて、次回の申し込みまでがコミケですね! どうか冬コミでまた皆様にお会いできるよう……。
荷物整理などが完了したら、サイトの情報なども修正しないとです。あ、自家製通販も一応受け付けていますので、ご興味ある方は是非どうぞ^^


さてー、今後のイベント参加は同人活動のページ通りなんですけど、9月末にある本の杜……はまだ迷い中で、11月は文学フリマに申し込みました。コミティアは、売り子さんが確保できれば申し込もうと思っています。どっちも出るなんて贅沢かな?笑
11月の頃には冬コミの当落も出ますね。秋にはもう在庫のカラッカラなオーケストラ本を1&2巻どちらも再販します。こちらもよろしくお願いします〜


最後に。ブースは取りそびれてしまったので、いただいたものを。皆様からこんなにいろいろいただけて幸せです。本当にありがとうございました!

FF3夏コミ新刊抜粋(4)

[2012-08-09]


いよいよコミケは明日です。
最後の抜粋を置いておきますねー。

ドワーフやハインのところから抜粋したかったのですが、なかなかいいシーンが無く……。
閑話休題的なところになってしまいました。

明日はスペースでお待ちしています!!!!

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 カーテンから光が漏れる。
「ん……」
 ロザリオが布団の中でうごめいた。もう朝なのか、とあまり睡眠を取れていないような体感で、上半身を起こす。
「おい、ハーヴェル……今どの位だ?」
 目をこすりながら、ロザリオは隣で寝ている少年に声をかけた。
 が、その対象となるべき少年の姿はない。
 仕方がない、とベッドから身体を起こし、着替え始める。ある程度の身なりを整えた上で、つまりプロテクターなどは一切着けないまま、部屋を出た。
 隣の部屋をノックする。
「はぁい、どうぞ」
 聞こえてきたのはレスローラの声だった。許可の返事を受けて、ロザリオが室内へと入る。見慣れた私服のレスローラがドレッサーに腰掛けていた。すっかり馴染んだワインレッドのコートはハンガーに掛かっている。
ドレッサーの上には乱雑に並べられた小瓶類があり、レスローラも身支度をしていたというのが伺えた。
「おはよ。もう朝ごはん食べちゃったわよ」
 レスローラがロザリオに笑みを投げかけてくる。不自然すぎるその顔は、やはり無理をしているに違いないという印象を与えてきた。
「え、あぁ。もうそんな時間か……」
 ぐるりと部屋を見渡す。
 これまで泊まった宿となんら変わりない。簡素なドレッサーと、テーブルチェアのセット。羊の毛だろうかふかふかのベッドに、調度のいいライトなど、客がいない中にも清掃は行き届いているようで、その心地よさにどうやらロザリオは寝坊してしまったらしい。
 とはいえ、早朝からの予定は無かったため寝坊との表現にも語弊があるのではあるのだが。
 ところが、レスローラはますます笑って彼に言った。
「もう昼過ぎよ。よっぽど疲れてたのね。ティスとハーヴェルは宿の外に行ってるわ」
 昼過ぎとは。
 いくらなんでも寝すぎだろう。
思わず頭を抱えて、ロザリオは部屋を出た。

 宿から見える草原に、ティスとハーヴェル、それから羊の群れを確認することができた。
 ウルにも負けず劣らない、空気の良さだ。山の村であるウルに比べて風が吹き抜けているためだろう、空気の通りが良い。
 ここからではまだ声は届かないだろうと、ロザリオは歩いて向かう。
 草原の向こうには水路が広がっており、羊の一匹がそちらに突進し、落ちた。
「あぁ、もう!気をつけてっ、いつも言ってるのにー!」
 ティスよりも幼い少女の声が空に響き渡る。驚くことに羊は自力で水路から出てくると、その少女に向かって駆けてきた。
「わぷ!」
 少女の身体が、その勢いのまま後ろに倒れる。
けらけらと笑う声と、羊の鳴き声が再び空に溶けていった。
 思わず立ち止まってその一部始終を見、くすりと笑みが零れる。
「あっ、リオ兄!」
 それにティスが気づいただろう、右手を挙げて大きく左右に降ってきた。
 こちらは控えめに、左手で返す。
 ティスの栗色の髪の毛は、光を浴びて金色に輝いていた。珍しく今はフード付きのローブは着ていない。
 ワンピースの長袖もゴムを使って捲られており、羊たちとじゃれあっている。
 ティスの隣には普段と変わらない姿のハーヴェルがやはり羊と戯れていた。
 元々軽装なモンクである。プロテクターのみ外されていたが、ぱっと見では違いは認識出来ない。羊は可愛く見えて意外に強かったりするためプロテクターがあってもいいだろうとロザリオは思ったが、羊飼いの少女がそもそもワンピースしか着ていないことを確認し、杞憂だったと判断した。
「リオ兄、ここギサールっていう村なんだって。なんか懐かしいよね!」
 故郷を重ねていたのはロザリオだけではなかったらしい。

FF3夏コミ新刊抜粋(3)

[2012-08-02]


帯が完成しました。
いつも帯はお手製カラーコピーです(しょぼしょぼん)
A3サイズで8枚分作れます。
断裁機なんぞあるわけもないので、手作業でひとつずつカット。腱鞘炎になりかけます。

今日の抜粋はちょっと先へ進めて、第2章から。
大好きな某氏の登場ですね!

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 ホンギャー
「ん……」
 耳元で、獣のような複数の鳴き声がする。耳をつくようなその不協和音でロザリオは目を覚ました。
 意識が飛ぶ前に見たような、それでいてどことなく違う、山頂の風景が広がっていた。共通しているのは、上には空しかないということと、触れる地面が赤土に覆われているということだった。反対に異なっているもの、それは、辺りに敷き詰められている植物性のクッションと、幾つかの巨大なたまご、そして、数匹の、小鳥の姿があることである。
「小鳥……じゃない。まさか」
 小鳥、と表現したものの、その生き物もたまごも座り込むロザリオの高さと変わらなかった。つまり一メートルくらいはあるということだ。
そうして自分の記憶を遡れば、
「まさか、ドラゴンの……?」
 それが鳥ではなく竜のこどもであることは簡単に想像できた。
 思わず、ぐらりと体が傾きそうになる。必死でそれをこらえて、そして他の三人の安否についてようやく思考を巡らせた。
 幸い、全員の姿が側にあった。先の山頂と広さは同じ程度だが、たまごや子ドラゴンの存在があり、かなり空間が圧迫されている。横たわる三人の姿も確認してしまえば本当に手の届く距離で、とりあえず体を起こそうと、手を伸ばした。
「おやまぁ、こんなところで人に会うなんて」
 伸ばした手がレスローラに触れる直前。ロザリオの背後で人間の声がした。
 思わず、剣に手をかけ、反射的にそちらを振り向く。
「おっと、危ないな。ぶっそうだぜにーちゃん」
 両手で『降参』のポーズを取りロザリオに対峙するのは一人の青年だった。ロザリオと同じ濃い茶髪をオールバックにしている。よく見れば髪は長く、うなじの辺りでひとまとめに結ばれていた。
 着ているものは動きやすそうなパープルの衣類で、左肩には簡素なプロテクター。青緑色のフリンジがなびく風に揺れているのが目に入った。
「驚かせちまった?いやいや、でもそれはお互い様だぜ。昼寝してたら物音と、しばらくしたら人間の声が聞こえたっての。こっちも驚くぜ。まさか、ドラゴンに捕まっちまう人が俺以外にもいるなんて思わないだろ。いやー、あんたらドジだねー」
「……」
 警戒心が一気に削がれた。ハーヴェルにも似た、いやそれ以上にタチの悪い脳天気な口調でまくし立てられる。ロザリオが最も苦手とするタイプの人間だった。この手のタイプとまともに会話しても敵わないと経験で悟っていたからだ。決まってこういう人間の相手をするのはレスローラなのだが、あいにく彼女はまだ眠りについている。右後ろでスヤスヤと寝息を立てる長女の姿を横目で確認し、改めてため息をついた。
「いや、話から察するにそういうあんたも捕まったんじゃ……」
 辛うじて出せたのはそんな言葉だった。嫌味にも近いその発言に、男は気を悪くするどころか嬉しそうに笑う。
「あ、そうか。うん、そうだな!はっはっは。お前鋭いなぁ」
「……」
「俺はデッシュって言うんだ」
 だが、その男が名乗ったソレに思わず目を見開く。
「デッシュ?」
「お、俺のこと知ってるの?」
 なぜか興味津々に聞かれる。不思議に思うが、ロザリオはカナーンでデッシュの名を聞いたことのみを彼に伝えた。なんとなく、サリーナのことは伝えない方がいいと、直感的に悟り、そこは省いておく。
 ロザリオの言葉に、デッシュは本当に微量だが残念そうに、しかしそれでも明るさは保ちつつ、頷く。いつの間にか胡座をかいてロザリオに対峙しており、ロザリオも、剣にかけていた手を外していた。
「実は俺、記憶喪失でね。名前以外のことは思い出せないんだ。だからあんたが俺のこと知ってるって言ったから、まさかと思ったんだけどね。まぁ、そんな簡単にはいかないよな。ええと、あんたの名は?」
「そうだったのか。それはすまなかった。俺は、ロザリオ。俺以外にもそこに仲間が三人。金髪のがハーヴェルで、銀髪の女性がレスローラ。怒らすと怖いから注意な。それからあっちの白い服を着ているのがティス」
 ロザリオが、未だ眠りから覚めない三人を紹介する。デッシュの瞳が、レスローラから外れない。

FF3夏コミ新刊抜粋(2)

[2012-07-30]

今日は前回の続き。
まだ祭壇の洞窟にすら行けない(苦笑)

あ、前回「冒頭」といってますが、厳密な冒頭ではないですよー

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 パルメニ山脈の特徴は、強靭な硬さといわれている。歴史があるというのはもちろんだが、職人の資源に用いられていたということもあり、山そのものが強くなっていった。そのため、これまでに起こった天災でも大きな被害は生じることはなかった。
 そんな山に、大きな穴が開いたのである。
 穴が空いた場所はちょうどウルの裏手に位置していた。様子を見に行った村人曰く、穴の先が続いているというのである。小さな村であるため、噂は瞬く間に広がった。普段であればウルの長老トパパや神官ダーンによって迅速な措置がとられるのだが、今回ばかりは例外でまだ手が回っていないというのだ。
 これはしめた、とハーヴェルはすぐに思った。実のところ、ハーヴェルはその山をずっと怪しいと思っていたのだ。
 言わせれば、『空気が流れている』らしい。リオも一緒に調べたことがあるが、確かに『風のような音』を感じたと覚えている。ハーヴェルは、そこへ行ってみようと提案してきたのだ。
 ロザリオの返事にハーヴェルはにやりと笑った。両の手のひらを『ぱん』と、景気いい音を鳴らしてあわせる。そのリアクションに、ロザリオの顔がゆがんだ。表現するなら、『しまった』だろう。
「ほら、リオ兄も興味あるじゃんよ。そうと決まれば決まりな。まだ昼過ぎだし、これから行くよ!そういうわけだから、剣術の修行なんて今日はもう片付けてさ。じゃ、裏門で待ち合わせでよろしく!」
「え、いや、その」
「大丈夫。ローラとティスも賛成してるから!もう支度してるはずだし!」
 ロザリオの反論を待たずして、ハーヴェルは駆けていった。
 ぽふっ、と。芝生に木刀が落ちる。ローラとティスという、兄弟同然の友人たちの名を聞きながら、事態を避けるのが困難になったと、ロザリオは覚悟を決めた。

FF3夏コミ新刊抜粋(1)

[2012-07-28]

値札を貼り貼りしてます。
オリジナル本はどのくらい持ち込むべきだろうか……。

さて、日付が過ぎてしまいましたがぼちぼちとFF3本の抜粋をしていきます^^
今日はやっぱり冒頭から行きましょう〜

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「なぁ、リオ兄(にい)は興味ないの?」
「うーん……」
 この青年、名をロザリオというのだが、周囲には『リオ』という愛称で呼ばれていた。
「俺はずっと怪しいと思ってたんだよ。だってよ、あそこだけ山の音が違うんだぜ。こう、空気が流れる音がするっていうか。ダーンのじいさんもトパパのじっちゃんも何も教えてくれないしよ……」
 彼の隣では、芝生に腰掛ける金髪の少年がなにやら文句を言っていた。
こちらも成人している雰囲気はなく、それどころかロザリオよりももっと若く見える。『兄』と呼んでいる以上、ロザリオよりも年下であるのは間違いないのだろうが、くりくりとした碧眼と言葉の節々が彼の幼さに拍車をかけていた。
「俺らさぁ、このサスーンから出たことないじゃん。このあたりもう遊び尽くしちゃったし。もちろん不満はないけど、こう、なんていうの?刺激とかほしいじゃん。男のロマンってやつ。冒険心をくすぐるような、さ」
「お前は落ち着きがないから心配なんだ、ハーヴェル」
「じゃあその落ち着きがない俺のためにもついて来てくれよ」
「そういう問題じゃないだろう……」
「ふんだ。リオ兄のケチ。そんなだから女性受けが良くてもスグにふられちま……いててっ」
「それとこれとは話が違うだろ?」
 ロザリオがにこにこと満面の笑みを浮かべ、ハーヴェルの耳を引っ張っている。ロザリオが頬にかかるくらいのストレートヘアーであるのに対して、ハーヴェルの金髪は若者らしく短く切られていた。そのため、耳元は目立っており、つまみやすい。
 もっとも、日ごろから頻繁にそんなことされてはたまったものではない。
「いてててててて。わ、わるかったよ!」
「ふむ?」
 ぱっ、とロザリオの指が外れる。やや血色の良くなった自分の耳に手をかけて、ハーヴェルは話題を元に戻した。
「でもさ、みんなが教えてくれないからっていうのもあるじゃん。しかも今はみんな村の復興を優先してるから『穴』もふさがれちゃいない。本当に、リオ兄は興味ない?」
「興味ないといえば、嘘になるけど……」
 ハーヴェルがずっと話題に出してきているのは、村の近くにあるひとつの山のことだった。
 例の大地震でこの辺りに起きた三大被害。ひとつは、南の貿易町カナーンへ続く道に大岩が出来てしまったことである。先述した『商人のルート』がこれに該当しており、物資の流れが悪くなっていた。
 もちろん、ダウが何の対処もしなかったわけではない。すぐに炭鉱と技術に優れた村カズスの職人に命じて岩を破壊させようとした。それにもかかわらず、なんの進展もないのだ。
 田舎町であるウルを訪れる商人や旅人はほとんどいないといえども皆無ではなかったが、今は言葉通り訪問者はいなくなってしまっている。
 ダウからの追加の指示もなく、カズスでの動きもなく……カナーンからの物流の悪化がこれ以上続けば、遅かれ早かれ生活に影響が出てしまうのは目に見えていた。これが一つ目の被害である。
 二つ目は、異形の魔物が増えたことだ。
幸いにして、魔物の徘徊する時間は夜更けと決まっており、現状では対処も可能なのだが、いつ何が起こるかわからないという不安もある。
こればかりはどうすることも出来ず、警備を強化することで対応していくらしい。
 そして、三つ目の被害。これがハーヴェルの言う『穴』のことだった。